かつてゲテモノ扱いされた「名古屋めし」 逆境を乗り越えた“強さ”とは新連載・名古屋めしビジネス「勝ち」の理由(2/4 ページ)

» 2019年10月28日 07時00分 公開
[大竹敏之ITmedia]

手羽先、みそカツ、喫茶店の有力3社に聞く「名古屋めし」の強さ

 2000年代以降、全国展開を本格化した名古屋めし企業として、手羽先がメインの居酒屋チェーン「世界の山ちゃん」(経営/エスワイフード)、みそカツの「矢場とん」、喫茶チェーンの「コメダ珈琲店」が挙げられる。

 地元以外での展開に際し、各社はいずれも「名古屋めし」に対する関心の高さが優位に働いているという。

 「名古屋めしというキーワードのおかげで商品の紹介をしやすい。手羽先以外でも、どて煮やみそ串カツなど名古屋めしカテゴリーの中からの注文は多い」(「世界の山ちゃん」エスワイフード営業部)

 「『名古屋めし』という言葉のおかげで、名古屋にはここにしかないおいしい食べ物がたくさんある、というイメージを多くの人が抱いてくれた。他県の店舗でもお客さまの大半は“名古屋名物のみそかつ”と認知した上で利用してくれていて、『名古屋めし』のフレーズは非常に有効に働いていると感じる」(「矢場とん」鈴木拓将社長)

 「小倉トーストやみそかつパンは東日本、西日本エリアの方が注文数が多い。名古屋めしに対して“一度食べてみたい”、“どんなものだろう?”と関心や興味を抱いてくれているようです。デザートのシロノワールも、コメダオリジナルではなく名古屋で一般的に食べられる名古屋めしの一種だと思っている方もいらっしゃるようで、名古屋で人気らしいから食べてみたい、と注文の動機の一つになっているようです」(「コメダ珈琲店」広報)

コメダの最大のウリであるモーニングサービス。朝の時間帯はドリンクにトーストやゆで玉子などが無料でついてくる名古屋独特のシステムで、料理の種類ではないにもかかわらず一種の名古屋めしとして認識されている

 名古屋めしに対する期待の高さが集客につながっているがゆえ、ローカライズはしないというのも3社に共通する考え方だ。矢場とんの鈴木社長は名古屋ならではの食べ方を推奨する、と力強く語る。「みそはちょっとだけでいいです、というお客さんがいるが、“たっぷりかかっていてこそおいしいんです!”と本来の食べ方をお薦めするようにしています。今はもう“その土地の好みに味を合わせる”という時代ではない。本場の味をそのまま提供することこそが、お客さまの期待に応えることになる」

甘辛いみそダレがたっぷりかかり、ご飯が進む矢場とんのみそかつ。写真は目玉商品のわらじとんかつ

 世界の山ちゃんでも「飲食後に“味が濃い”といわれることはよくあるが、“名古屋でははっきりした味が好まれるのです”と説明すると納得してくれ、名古屋ならではの濃い味を楽しんでくれている」という。

「世界の山ちゃん」の看板メニュー、幻の手羽先。甘辛なタレとピリ辛のコショウの組み合わせの妙が名古屋人の嗜好にマッチした。お客1人につき平均2.5人前を注文する。写真は5人前

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