かつてゲテモノ扱いされた「名古屋めし」 逆境を乗り越えた“強さ”とは新連載・名古屋めしビジネス「勝ち」の理由(3/4 ページ)

» 2019年10月28日 07時00分 公開
[大竹敏之ITmedia]

内・外の障壁の克服が名古屋めしビジネスを強くした

 名古屋めしビジネスの強さの背景には、名古屋人のシビアな金銭感覚に鍛えられてきたこともあると考えられる。「財布のひもが固いといわれる名古屋で、いかにお客さまの満足度を高めてリピートしてもらうかを重視して、商品やサービスの充実を図ってきた。そこで培われてきた『くつろぐ、いちばんいいところ』というコメダスタイルは全国に通じる普遍的な価値があったのだと考えています」と、コメダ珈琲店・広報。セルフサービスでなければ成立しないと思われていた喫茶店業界にあって、フルサービスでファンをつかんできたのは、同社の顧客第一主義を象徴している。

コメダ珈琲店は1968年創業。今や約860店舗とスターバックス、ドトールに次ぐ国内3位の喫茶チェーンだ

 「名古屋の消費者を満足させられれば全国どこでも成功する」。これは他県での出店を果たした名古屋の飲食企業からしばしば聞かされる言葉。名古屋人は倹約志向が強いため、飲食店は高いコストパフォーマンスが求められる。加えて人口流動が少ない土地柄もあって、新規客の獲得以上に常連の来店頻度を高めることが重視される。常に顧客の満足度向上に努めてきたことが、名古屋めし企業の競争力を高めてきたといえるだろう。

 もう一つ、逆境をバネにしてきたといえば、名古屋の食文化に対するかつてのネガティブなイメージの克服も挙げられる。1990年代までは名古屋は東京のメディアから揶揄(やゆ)されることが多く、独特の食文化はその象徴でもあった。「何でトンカツにみそをかけるの?」「うなぎの蒲焼をお茶づけにするなんて!」とゲテモノ扱いされることが少なくなかったのだ。

 こうした雌伏の時代を経験しているがゆえ、名古屋めし企業は決しておごることなく、リサーチや食材、人材の確保などしっかり足場固めをした上で他県での出店を進めていると考えられる。

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