ファミリーカーとしてのEVにとって致命的なのは価格で、いわゆる家族のためのクルマとして使えるものは、日産リーフの330万円が最廉価。同じリーフでも上は451万円になる。その価格に手が届く人はいいだろうが、全部が全部そうではない。普及ということを考えれば、やはり250万円というラインがひとつの目安だろう。トヨタのプリウスやノア/ヴォクシーなど、家族向け用途で売れているクルマの中心価格はそのあたりだ。
「EVの中古なら安くてお買い得じゃないか?」という人がいるが、ついこの間までシェア0.1%だったEVのユーズドカーの市中在庫が豊富かどうかは、議論の余地があるようには思えない。
しかも安いのはバッテリーの劣化で航続距離が激減しているからだ。過疎地在住でガソリンスタンドが近隣から撤退してしまい、今や充電の方が便利だし、行き先も病院とスーパー程度で長距離乗らないという人が安く購入するには、運良く面白いソリューションになるかもしれないが、とても一般に勧められる話ではない。
ということで、EVはファミリーカーとしてはまだ価格が高い。バッテリー単体の価格が200万円から300万円くらいといわれている現状では、この価格はいかんともしがたい。しかも現実的な運用を考えれば、戸建てで自分専用の充電器を完備し、夜間に低速充電して使うのが基本中の基本。家に充電器がないとすれば、会社の役員か何かで、マイカー通勤をして勤務時間に会社の充電器を独占できる雲上人でもなければ維持は相当に難しい。
それでも強硬なEV原理主義者の人はいる。
- トヨタの電動化ゲームチェンジ
世間からはずっと「EV出遅れ」と言われてきたトヨタ。今回、電動化車両550万台達成を5年前倒して2025年とするとアナウンスした。そのために、従来のパナソニックに加え、中国のバッテリーメーカー、BYDおよびCATLとも提携した。さらに、用途限定の小規模EVを作り、サブスクリプションモデルを適用するというゲームチェンジをしてみせたの。
- マツダのEVは何が新しいのか?(前編)
東京モーターショーの見どころの1つは、マツダ初のEVであるMX-30だ。クルマの生産から廃棄までの全過程を通して見たときのCO2負荷を精査した結果、35.5kWhというどこよりも小さいバッテリーを搭載した。世の中の流れに逆らって、とことん真面目なEVを追求した結果出来上がったのがMX-30だ。
- 岐路に立たされた東京モーターショー
すでに海外メーカーからは完全にそっぽを向かれた東京モーターショー。主催団体である日本自動車工業会(自工会)は、前回にも増して厳しい危機感を持っている。しかし今回は、やり方がとてもトヨタっぽい。クルマ業界だけでなく「オールインダストリー」で広く開催し、未来のモビリティ社会に向けて「オープン」に進化/拡張していくと定義している。
- EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。
- テスラModel 3をどう評価すべきか?
テスラは既存の自動車産業をおとしめ、フェアでない批判を繰り返してきた。ただしコロンブスの卵的発想でプレミアムEV市場を作り出し、EVのイメージを変えた功績は認めざるを得ない。そのテスラの正念場がModel 3だ。プレミアムEVメーカーから脱却し、量産EVメーカーになれるかどうかはModel 3の成否にかかっている。
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