クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

「超小型EV」でEVビジネスを変えるトヨタの奇策池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2019年10月30日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 例えば、先日(10月4日)のEVsmartBlogの対談で、夏野剛氏は「今時、エンジンの付いたクルマに乗っているのは20世紀人ですよ。前世紀の遺物を使っているという概念になっていくと思うんです」などと平然と語った。しかし、筆者には「ケーキがあるのにどうしてパンなんて食べるの?」としか聞こえなかった。

 EVには未来的なフィールがあることは筆者も認めるし、いずれ時間をかけてEVが主流になるとは思う。しかし、今EVに乗っていないのは前世紀人という意見には到底賛同できない。またおそらくは文脈的にも、環境の事を考えての発言とは思えないが、本気で温室効果ガスを削減していこうとすれば、価格帯別にさまざまな技術が必要で、高額なゼロエミッション技術があればほかにはいらないというものでもない。

 100万円のクルマにはその価格なりの、200万円のクルマにもその価格なりの、それぞれの価格帯に向けた技術が組み合わさって、ポートフォリオとして平均値を下げることが現実的だ。よもや「EVも買えない貧乏人がクルマに乗るのが間違いだ」というつもりでもあるまい。多くの人が「移動の自由」を享受しながら、環境問題を解決していくには、マイルドHV(ハイブリッド)やHVもまた並行して必要なのだ。

後ろから見た超小型EV

 まあ実はこのあたりの人は、リーフが買えるかどうかというレベルではなく、もっと上のテスラクラスターの人たちだ。テスラはEVの常識を壊して、プレミアムEVというジャンルを構築してみせた。それはつまり「安くしようと思うからいけない」という概念で、富裕層に向けた新しモノとしてのEVという新機軸だった。

 このクラスの人たちは1000万円でも2000万円でも大して気にしない。だったらケチらずにバッテリーをたっぷり乗せて、デジタルなガジェットを大量投入して、未来のクルマらしさをたっぷり演出してあげればいい。なに、多少不便があったって、その時はもう一台のベンツで出掛ければどうってことはないのだ。

 このテスラのプレミアムEVというコンセプトはヒットを飛ばし、初めて「欲しいEV」を世に送り出した。そして現在厳しさを増す温室効果ガス関連法の締め付けによって、既存の自動車メーカーがEVに進出せざるを得なくなった。

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