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» 2019年10月31日 07時00分 公開

業務を効率化するITツールの最新事情:Microsoftとのコラボで注目 Steelcaseが目指す新しい仕事場の形 (1/2)

世界的なオフィス家具メーカー、Steelcaseが考える新しいオフィスの形とは?

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 日本マイクロソフトが2019年9月に国内投入を発表した「Microsoft Surface Hub 2S」は、チーム内でのコラボレーションを目的にしたディスプレイ型デバイスだ。「Surface」ブランドの最新シリーズで、50インチの大画面を生かし、情報共有やプレゼンテーション、遠隔地とのビデオ会議などを実現する。

 また、「Windows 10 Team」というWindows OSを採用しており、Windows 10のアプリを実行したり、タブレットPCでの操作感を大画面タッチスクリーン上でそのまま再現したりできる特徴を持つ。

Surface Hub 2Sを装着した「Steelcase Roam」(左)と、Steelcaseの移動式家具「FLEX Collection」のホワイドボードとカート(右)

 前モデルのSurface Hubは、基本的に壁掛けでの利用を想定しており、ホワイトボードのような使い方をしたくても、ケーブルの取り回しの関係で移動に自由度がなかった。だが今回の「Microsoft Surface Hub 2S」では、オフィスや教育現場向けの家具を開発する米Steelcaseとの協業で、移動が容易な「Steelcase Roam」というスタンドと専用のマウンターが用意されており、これにAPCの充電型バッテリーを装着することで、電源ケーブルをコンセントに接続することなくSurface Hub 2Sを利用可能になった。デバイスを好きな場所に移動して作業できるわけで、オフィススペースの有効活用につながる。

 これはほんの一例だが、近年のMicrosoftは、Surface製品群や同社ソフトウェア・サービスの市場投入にあたってSteelcaseとの協業を行うケースが増えており、単純にPCやタブレットを販売するというだけでなく、いかに現場で活用してもらうかという点を重視している。

 今回は香港を拠点にアジア太平洋地域の市場調査や製品展開を行っているSteelcaseグローバルクライアントコラボレーション担当リージョナルバイスプレジデントのJason Taper氏に、どのように両社がコラボレーションし、実際にどのように現場で製品を活用して業務改革が進んでいるのかを聞いた。

SteelcaseはMicrosoftとのコラボレーションで何を生み出すのか

 2019年に日本マイクロソフトの報道関係者向けイベントが日本スチールケースのオフィスで2回開催されている。1つは今回のSurface Hub 2SならびにSurface Pro Xを含むSurface新製品群の発表、そしてもう1つがSurface製品群の開発責任者であるPanos Panay氏を囲んでのラウンドテーブルだ。

 Surfaceの目指す方向性にSteelcaseのコンセプトが合致したことが理由だというが、この協業は2017年にスタートしている。Taper氏によれば、Steelcase内にはワークスペース、つまり仕事場の未来を考えるチームが存在し、そこで働く人を含む将来に向けた研究開発を続けているという。同様のチームはMicrosoft内にも存在し、そうしたなかでMicrosoft CEOのSatya Nadella氏とSteelcase CEOのJim Keane氏の両トップがとある会議で意気投合したのがきっかけだ。

 こうした過程で生まれた両社のコラボレーションの第一弾が、Microsoft SurfaceとOffice 365を活用した「クリエイティブ・スペース」である。続く第2弾では、Microsoft Surface Hub2Sの専用スタンド「Roam」が生まれ、これらとともに、Steelcaseの移動式家具「FLEX Collection」を使用することで、チームのメンバーがどこにいてもアイデアや情報を素早く共有できるようになるという。

 また、スチールケースでは教育分野にも注力しており、「Steelcase Node」という製品を開発した。従来の教育現場では、教室内に教壇があり、それを臨む形で生徒の机が整然と並ぶのが一般的。ところが「アクティブラーニング」という概念では、生徒が机で円陣を組む形で配置して学習を進めるなど、より積極的に授業に参加することを促すスタイルになっている。Nodeはこうしたアクティブラーニングでの利用を想定して、机と椅子を一体化させ、キャスターでの移動も可能にしている。

 Steelcaseが既存顧客を含むさまざまな知見を基に製品開発を行っているとすれば、Microsoftは使う人たちが新しいことを可能にする製品を作り続けており、それぞれの役割を通じて相互補完するのが両社の協業の意味するところだとTaper氏は語る。

従来型の学習モデルとアクティブラーニングの学習モデルの違いを説明するJason Taper氏
Steelcase Nodeを使った新しい学習モデルを紹介するTaper氏

働く空間をデザインする

 「Steelcaseの製品は全て私たちの知見で作られている。その目的は人の可能性をどんどん明らかにしていくということだ。そのうちの1つの要素がスペース(空間)であり、この在り方によってより良い仕事の結果を引き出せると考えている」(Taper氏)

 仕事空間をデザイン、提案するのもSteelcaseの仕事だというTaper氏だが、その事例の1つが本インタビューを行った会議室だ。通常、企業の会議室といえば大きな机や長机が並び、部屋の側面のどこかにホワイトボードやディスプレイ、プロジェクターが設置されている風景が想像できるだろう。

 今回取材した日本スチールケース内の会議室は「Team Studio」と呼ばれ、同社のコンセプトを体現するアプリケーションの1つとして機能している。長方形をした部屋には2つのテーブルが配置され、ちょうど部屋の真ん中の部分が空いていて行き来が自由になっている。机も通常の会議室のテーブルとしては高く、椅子に座っている人と立っている人の視線の差がそれほどない。会議中、つまりチーム作業中に必要に応じて好きに移動して、立った状態のまま目線を合わせて話し合うことも可能だ。

同社がデザインし、提案する「Team Studio」の会議室では、誰もが自由に部屋内を動き回り、立った状態のまま座った人と目線を合わせて話すことができる

 また、このチームで共有する空間において、そこにいる全ての人たちが同じ目的に向かって一直線に歩んでいる必要はない。同社では人の行動には「Focus(集中)」「Collraboration(コラボレーション)」「Respite(小休止)」「Learn(学習)」「Active Hyper Collaboration(アクティブハイパーコラボレーション)」の5つのモードがあり、1つの空間に複数のモードが存在する余地があっていいとしている。

 前述のTeam Studioでいえば、会議室の隅には他よりも背丈の低い椅子が設置されていて、ちょっとしたプライベートな空間となっており、部屋にいながら会議中に席を外して電話をすることもできる。また、テーブルが2つあることで、活発に意見が交わされているテーブルがある一方で、もう片方のテーブルでは別の作業をこなしつつ会議に耳を傾けている別のモードの人もいるなど、複数のモードの存在が許容されている。

部屋の隅には椅子が設置されており、ちょっとした小休止が可能。電話などをしてもいい

 積極的にコラボレーションを行うための工夫もある。Team Studio内に設置されたディスプレイなどは、「Puck(パック:アイスホッケーで使われる“パック”と同義)」と呼ばれるコントローラーを使って手元で制御でき、手元のデバイスを接続させることも可能だが、このパックは全ての会議参加者の手元に用意されており、誰もがアクティブハイパーコラボレーションに参加できる。よくある会議室ではディスプレイ付近のテーブルにこの手の機材が配置されていることが多いが、このあたりの考え方の違いが明確になっている。

部屋のディスプレイを制御する「Puck」は、ここにPCやスマートデバイスを接続して画面を投影できるようになっている
Puckは全ての参加者が利用できる形で複数配置されている
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