#SHIFT

Microsoftとのコラボで注目 Steelcaseが目指す新しい仕事場の形業務を効率化するITツールの最新事情(2/2 ページ)

» 2019年10月31日 07時00分 公開
前のページへ 1|2       

日本でもデジタルトランスフォーメーション(Dx)は急速に進んでいる

 Taper氏は「いままでのオフィスでは、こうした感じで、違うモードでいろいろな人がいろいろなところで作業している姿は見られなかった。こうした新しい仕事のやり方というのは、実際に人々が経験し、理解することが大事だ」と話す。

 同氏は新しい仕事環境での新しい働き方を「Agile Work(アジャイルワーク:身軽な仕事)」のように表現しているが、金融サービスやIT産業が積極的に取り込んでいくなかで、PwC、アーネスト&ヤング、デロイト、KPMGといった“ビッグ4”と呼ばれる4大コンサルティングファームが音頭を取り、その働き方を自ら実践している。

 従来、コンサルティング企業は顧客の下へと出向き、意見を聞きながら問題解決に当たっていることが多かったが、こうした新しい働き方については逆に顧客を自社へと招き、それを実際に体験してもらう形でアピールするスタイルへと変化しているという。

 そして何より重要なのが、実際に体験し、実践していくなかで成果が目に見えること。Steelcaseの製品を全ての企業が導入すべきというわけではなく、これを使うことでいままでとは異なる仕事のスタイルが可能になることが重要だとTaper氏は加える。

 アジア太平洋地域を中心に見ている同氏だが、米国では一度良いと判断したら一気に変えていく風土がある一方で、日本を含むアジアは全体に慎重で、時間をかけて少しずつ積み上げていこうという意識が強いという。実際に日本の現状について聞くと「どちらかといえば取り組みは遅れている。だが、すぐにも追いつこうとしている。(日本の)企業風土において、何か変化があるとリスクがあるととられがちだが、私たちのリサーチ結果によればむしろ、企業側は変化を起こしたいと考えているようだ」とTaper氏は述べている。

 危機意識が強いのは日本企業だけでなく、世界的にみて“重厚長大”といわれる大企業ほど変化に敏感なようだ。例えば、日本ではソニーやLINEといった企業がコラボレーション先として挙げられているが、国内外事例としてはIBMとStandard Chartered Bank、HSBCといったどちらかといえば金融機関が多い。

 なぜ金融機関の参加企業が多いのかといえば、「最も新しい変化によって打撃を受けているのがそういう業態だから」とTaper氏は説明する。アジャイルワークという文脈で、「FinTech(フィンテック)」と呼ばれる新興の金融系企業が素早く環境の変化に立ち回る一方で、従来型の巨艦で運営される企業は小回りが利かない。そうした意識を反映した動きなのだという。また10年ほど前までは、企業における労働者の仕事というのは完全に役割分担が決まっていたが、MicrosoftやAmazonといった世界的に名だたる先進企業ほどデジタル変革の重要性を認識しているという。

 単純に海外の成功モデルを日本に導入すればいいというわけでもなく、人口密度が高く、特に労働人口が東京都心部に集中している日本では、それに応じたデザインを考えるべきだとも同氏は加える。それぞれの国にはローカルな事情があり、それをくんでいくことが重要だというのがその考えだ。

 これは個々人の働き方も同様である。興味深い話だが、Taper氏は香港を拠点に活動しているが、家族の時間やプライベートを大切にしつつ、出張を含む多くの仕事を日々こなしている。朝3時から4時の早朝に家を出て、5時から仕事を開始し、午後の早い時間には早々に仕事場を出て、顧客と会う時間に充てている。仕事は精神状態に左右される複雑なことが多く、能率を上げるためにプライベートの時間を大事にし、“9時5時”ではない新しい働き方を実践しているというわけだ。これについてクレームをつける人はおらず、それを実現するのもまたテクノロジーの役割だと同氏はいう。

 「日本の将来を考えたとき、高齢労働者の数が多く、今後も増えていく現状をどう捉えるのか。そのうえで今後のイノベーションを考え、名だたる経済大国でありたいと思うならば、アクティブラーニングを経て労働市場に入ってくる子どもたちの働く環境を考えていくべきだろう」(Taper氏)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.