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「WAGYUMAFIA」 代表・浜田寿人が明かす“挫折からの復活劇”――そして「世界一」への果てしない挑戦浜田寿人の肖像【中編】(2/5 ページ)

» 2020年01月09日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

一筋の光から見えた「WAGYUMAFIA」の構想

 浜田がドイツの企業と取引をする少し前の13年3月、いわゆるライブドア事件によって刑務所に服役していた堀江が出所する。浜田は、共通の知人を介して堀江との縁が続いていた。

 実は堀江が収監される11年6月20日の前日、浜田は堀江と会っていて、シンガポールで和牛を提供するレストランをやりたいと相談したという。

 「一緒にやらないかみたいな話をしました。でも彼は翌日から刑務所にいくわけですから、それどころじゃないですよね。この時点では全く興味をもっていなかったと思います」

 その後、浜田はある知人から業界に詳しいデンマーク人を紹介された。彼が住むマヨルカ島まで会いにいくと、ロンドンの高級ホテルや高級レストランが集まる地区、メイフェアに行くように勧められた。その縁で、本格的な輸出が始まることになる。

 「彼から『ドイツと仕事をしても駄目だ。ロンドンのメイフェアに全ての富が集まっているので、メイフェアだけで完結させろ。ヨーロッパはメイフェアを押さえれば成功できる』と言われました。メイフェアに行くと、ステーキチェーン「MASH」を経営しているデンマーク出身の社長を紹介されて、『ちょうど和牛を探していた』という話になり、契約を結ぶことができました。ここから大きな取引に発展しました」

 輸出が始まったものの、「MASH」の担当者からは「和牛そのもののブランディングができていないのではないか」と指摘された。海外では、オーストラリア(豪州)産の交雑種も和牛と呼ばれている。神戸牛もいろいろなところから入ってくるので、何か違う名前を考えた方がいいと言われた。

 さらにMASHの社長からも、和牛についてのメディア対応や、調理もしてもらえないかと打診を受けた。最初は裏方として輸出の仕組みだけを作るつもりだったが、浜田は自分が前面に出ることも考えるようになった。

 浜田はしばらくの間考え続けた。考え抜いた末に出てきた言葉。それが「WAGYUMAFIA」だった。

 「ある瞬間にWAGYUMAFIAという言葉が浮かびました。もともとITや映画の会社を経営していましたから、IT業界でマフィアといえば、PayPalマフィアやAmazonマフィアなど、企業から独立した優秀な人材とネットワークのことを指します。

 名前を考えるときに重要だと考えていたのは、「KOBE BEEF(神戸ビーフ)」よりも強い言葉でなければ駄目だということです。和牛以上神戸ビーフ未満の言葉では、和牛の頂点にはいけないと思いました。それと、海外の人にも分かりやすいコンセプトにするには、1秒かあるいは0.5秒くらいで瞬時に分かる名前にする必要があります。あえて横文字にして、海外の人たちの意識を変えたいと思いました。

 カフェグルーヴを経営していたとき、あるラジオ番組に出演したら、司会者に『何をやっている会社なんですか』と聞かれたことがあります。いろいろやっていますと答えると、『一言で言えない会社は潰(つぶ)れますよ』と言われました。嫌な思い出ですが、実際に潰れてしまったので頭に残っています。一言で分かる強い言葉を意識した結果、WAGYUMAFIAにたどりつきました」

phot ステーキチェーン「MASH」の経営陣と
phot 「MASH」と商談中の浜田

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