資産運用“素人レベル”の地銀、SBI「25億出資」の勝算とは新連載・古田拓也「今更聞けない金融ビジネスの基礎」(3/4 ページ)

» 2019年11月08日 07時20分 公開
[古田拓也ITmedia]

 これは、指数に連動して値上がりするブル型ファンドと、指数と反対の動きをするベア型ファンドに同じ金額を投資する、いわゆる両建て手法だ。片方は必ず含み益となるため、含み益となった分だけ決済すれば、実現益をカサ増しできるというカラクリだ。しかし、もう片方のファンドは当然ながら同じ額だけの含み損を抱えているため、トータルで見た損益は変わらない。原則として無意味な資産運用にあたる。

 この事例の元ネタは、同じく金融庁が公表した「平成28事務年度 金融レポート」の地銀に対するモニタリング結果だ。この資料には、ほかにも本業利益の悪化を穴埋めするために、含み益が出ているものを積極的に決済し、含み損が出ている商品の損切りをあと伸ばしするといった「利少損大」の運用事例なども報告されている。

 地銀の中には、目先の黒字を重視し、決算書を「作る」ことで低金利状況を耐えようと考えている金融機関もいるようだが、このような運用方針は相場急変に脆弱(ぜいじゃく)だ。

 資産運用の鉄則は、最悪のシナリオが実現しても破綻しない運用方針を立てることだ。しかし、現状の運用には「金利が上がるまで耐えられれば……」という地銀の本音も垣間見える。

 これは、90年代のバブル崩壊による金融機関の破綻を想起させる。「いずれ不動産相場は勢いを取り戻す」という希望的観測をもって、特段の対策を講じなかった金融機関はバブルの崩壊により淘汰(とうた)された。

 将来の金利について予測がつかない以上は、低金利の超長期化やマイナス金利の深掘りといったシナリオまで考慮する必要がある。地銀の目先の課題には、運用方式の高度化やビジネスモデル自体の転換に迫られているという側面があるだろう。

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