資産運用“素人レベル”の地銀、SBI「25億出資」の勝算とは新連載・古田拓也「今更聞けない金融ビジネスの基礎」(4/4 ページ)

» 2019年11月08日 07時20分 公開
[古田拓也ITmedia]
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巨象、SBI証券の思惑

 ここまで考えると、SBIグループが推進する地銀との提携は合理的とも思える。

 SBIグループが9月6日に公表したプレスリリースによれば、同社は島根銀行に対し計25億円、議決権ベースで株式の34%を取得する資本業務提携を行った。これは、同社の掲げる、「第4のメガバンク構想」を具現化するための布石と読み取れる。

  SBIグループが決算説明会資料で提示した「第4のメガバンク構想」では、地銀を中心とした地域金融機関の資産運用に課題がある点が言及されている。SBIグループは、自社の強みであるアセットマネジメント部門について、課題を抱える地銀の資産運用を受託することで、高度な運用環境を提供し収益につなげる狙いがある。

 SBIグループの狙いはそれだけにとどまらない。同社はネット証券では最大手であるものの、野村証券や大和証券に代表されるような対面型の実店舗をほとんど保有していない。

 昨今の金融業界ではIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)による対面チャネルでの顧客営業が台頭しているという現状がある。この点で、SBIグループは地方銀行が有する顧客基盤を獲得して、資産運用に関する営業を全国展開させるという狙いも読み取られる。

 地銀には、地元に根ざした良質な顧客基盤が現在も受け継がれている。このような顧客基盤を有効活用し、事業の多角化や収益構造の転換をSBIグループのような他企業と模索していけば、今後も地銀に光明は見えないと言い切ることはできないだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Fintechベンチャーに入社し、グループ証券会社の設立を支援した。現在は法人向け事業コンサルティングを行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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