斜陽産業と言われるマスコミ業界。収益が悪化する一方、ネット媒体の台頭で速報性が問われ、人繰りの厳しい会社も少なくない。そんな中、取材活動をAI(人工知能)が担当する「記者0人の通信社」が陰で威力を発揮しているという。先端技術はジャーナリズムを救うのか、それとも記者の仕事を奪うのか、追った。
JX通信社(東京都千代田区)は、主にマスコミ向けに災害や事故、事件などの発生に関するSNS上の投稿を収集・分析し、発生地点や内容などが「確からしい」情報を提供するサービス「FASTALERT」を2016年から運営している。NHKと民放キー局全局、新聞社で導入されているほか、消防や警察に自治体、インフラ系民間企業なども災害情報を得るため利用する。
08年創業のベンチャーであるJX通信社の社員のうち過半数を占めるのはエンジニア。「通信社」を名乗るものの、記者は0人だ。FASTALERTでTwitterの膨大な書き込みを分析、「ニュース」を発見する役割は主にAIが担っている。
具体的には、膨大なツイートの文章や画像などから、「●●県××市で土砂崩れ」「東京都△△区の□□銀行で強盗事件発生」といった災害や事故、事件の発生をいち早く覚知、マスコミなどの顧客企業に通報する。全国にいるTwitterユーザーによる「街でこんな大変な事件を見た」といった書き込みが、メディアのいわば「目」として機能するのだ。
同社の担当者は「変動はあるものの、1日で100万件程度のツイートを分析し、クライアントに5000〜1万件の(ニュース発生の)“アラート”を流している」と明かす。
例えば台風15号が被害を出した9月8日〜10日では、台風関連のツイートのアラートは全国で11935件に及んだ。発生地点の都道府県別でみると、被害が多かったり話題になった東京都では2018件、神奈川県1941件、千葉県も1899件となった。台風19号の時(10月11〜13日)も全国で18062件のアラートが検出された。
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