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パナソニックがGoogle部門長や「出戻り人材」を幹部に 目玉人事はただの話題作り?“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2019年11月19日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

 樋口氏、馬場氏、松岡氏は、いずれも外資系企業の出身で、業界のキーマンということになるので、ITの本場における知見をパナソニックの製品開発に生かしたいとの狙いがあると思われる。

photo パナソニックが抜てきした松岡陽子氏が所属していたGoogle。同社ではスマートホーム部門の責任者を務めていた(提供:ゲッティイメージズ)

 片山氏も外資系出身だが、もともとは野村證券であり、証券アナリストの場合、出身が外資かどうかは仕事ぶりにはあまり関係しない。現在、片山氏は戦略担当の幹部として事業計画の策定などに従事しているが、投資家から自社がどう見えるのかという、社外の視点を求めた結果と考えてよいだろう。

外部の知見導入に加え「社内を刺激」

 こうした人事には、外部の知見を活用するという目的に加えて、組織に刺激を与える狙いもある。樋口氏はその典型だが、もともとはパナソニックに在籍していた人物が、外資系トップなどを経て出戻りということになれば、いやがおうでも社内から注目を集める。

 パナソニックは特にその傾向が強かったが、日本企業では、新卒一括採用、年功序列、終身雇用というカルチャーが当然視されてきた。生涯安心して勤務できるというメリットがある反面、同じメンバーで組織が固定化されるので、どうしてもマンネリ化してしまう。樋口氏のような人材が幹部になれば、自身のキャリアについて、真剣に考える社員は増えてくるだろう。

 これに加えて、こうした目玉人事には一般社会に対する効果もある。

 ユニークな経歴を持った人材の招聘がニュースで取り上げられれば、外部に対してオープンな社風をアピールできる。「この会社は出戻りもできる」「外資からも優秀な人材が入ってくる」となれば、同社への就職を検討している学生の印象も向上する。

 もっとも、組織全体を変えずに一部の人材に限って目玉人事を行っても効果は薄いとの見方も根強い。多様な人材が欲しければ、最初から多様な人材を採用すればよく、従来の硬直的な人事制度を維持したまま、ガス抜き的に一部の人材を外部から採用するだけでは、見掛け倒しにもなりかねない。

 では、一連の目玉人事はパナソニックの経営に大きな成果をもたらすのだろうか。

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