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パナソニックがGoogle部門長や「出戻り人材」を幹部に 目玉人事はただの話題作り?“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2019年11月19日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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昔からあった「古い会社のイメチェン人事」

 答えはまだ出ていないが、今のところ市場からの評価は半分半分だろう。というのも、こうした目玉人事というのは、実は昔から行われており、どちらかというと、旧態依然とした企業がイメージチェンジのための実施するケースが多かったからである。

 パナソニックの兄弟会社(パナソニック創業者の松下幸之助氏の義弟が同社から分離する形で独立)で、既にパナソニックに再び吸収されている三洋電機は、05年に経営危機に陥った。同社は、元テレビキャスターで社外取締役をしていた野中ともよ氏を会長兼CEOに据えるというサプライズ人事を発表したが、わずか2年後に野中氏は辞任に追い込まれている。

 NTTドコモは97年、iモードのサービスを立ち上げるにあたり、リクルート出身の松永真理氏やベンチャー企業幹部だった夏野剛氏を迎え入れ、サービス開発を担当させた。よく知られているようにiモードは一時的には大成功を収めたが、その評価は分かれている。

 iモードは、現在グーグルなどが行っているオープンなビジネスとは正反対の、典型的なガラパゴス・ビジネスであり、iモードの成功が逆に同社のガラパゴス化を促進してしまった面があることは否定できないだろう。その意味でiモードはもっともNTTらしい(官営企業らしい)ビジネスだったといってよい。

 夏野氏や松永氏がビジネスパーソンとして優秀であることは誰もが認める事実だろうが、両名がいないと、このビジネスが立ち上がらなかったのかというとそうではない(当時は、夏野氏や松永氏がこうした内向きなビジネスを展開したことに驚いた人も多かった)。こうした目玉人事でNTTドコモのイメージが向上したことが最大の成果といってよいかもしれない。

 パナソニックのライバルであるソニーは経営危機を経て大規模なリストラを実施し、現在は最高益を更新するまでになったが、ソニーと比較するとパナソニックの業績は大きく見劣りがする。一連の人事が効果を発揮するまでには少し時間がかかるだろうが、あと数年以内に目立った変化がなければ、単なる話題作りと評価されても仕方ないだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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