人手不足への対応、多様な決済手段への対応、顧客の利便性向上(レジ待ちのイライラ減少など)を目的として、「無人」や「省人」要素を打ち出したお店が増えている。先進的な実験店などを取材し、導入の狙いを探る。
連載第1回:2週間で開業した「ロボットコンビニ」 無人店舗の“その先”をつくれるか
連載第2回:本記事
少子高齢社会の到来により、各企業は人手不足に悩む。中でも「飲食業」は最も悩んでいる業種の1つだろう。帝国データバンクの発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2019年10月)」では、「非正社員」が不足している業種のトップが「飲食店」(78.3%)だった。前年同期が「84.4%」だったため改善されてはいるが、依然として人手が足りない現状に変わりはない。
世界各国を見わたすと、飲食店にテクノロジーを取り入れて省人化を行っている国も少なくない。特に中国は最先端だ。日本でも普及しつつある「テーブルオーダー」と呼ばれる、お客がホールスタッフを介さずにタブレットや自分のスマートフォンから注文するシステムなどだけでなく、お客の「顔」を認証して決済を行うサービスまで出てきているという。
日本でも、ようやくこうしたテクノロジーを飲食店に取り入れる動きが高まってきている。一方で気になるのが、「食事体験」がどう変化するかだ。確かに、効率化を進めれば店側のコストは減るが、せっかくの食事が味気ないものになってしまうのではないか。そこで、飲食店の効率化に関するサービスを提供している企業や店舗を探ってみた。
昨今注目が集まっているのが「モバイルオーダー」と呼ばれるサービスだ。お客はスマートフォンアプリなどを介して店舗へ商品を注文。時間になったら店舗へ受け取りに行くだけ。消費増税などを追い風に、サービスが拡大している。
東京の渋谷や四谷にある飲食店を中心に展開している「menu」はその1つだ。menuでは、地図を基にお客が近隣の飲食店を検索。気になった店舗で注文すると、決済までをワンストップで行える。また、店舗が商品を用意できる時間も表示されるという。
menuは19年4月にサービスを開始し、現在は1000を超える店舗から契約の話が来ているという。これまで飲食店が抱えていた「現金を扱うストレス」などオペレーション面での改善を武器に支持を広げている。
「もちろんお客さまにもメリットはある。平日のランチタイムに毎日コンビニでご飯を買うことに罪悪感を持っている人もいる。一方で、毎日レストランに行ったり、デリバリーで注文したりすると価格も高い。忙しくても店舗に行って商品を受け取れ、かつ店舗の味が楽しめるモバイルオーダーのシステムは受け入れられる土壌があると考えた」とmenuの二ノ宮悠大朗氏は話す。実際、決済額で見ると平日と休日では2倍以上、平日の方が多く利用されている。
アプリを介してお客のデータ分析も行えるため、どんな属性がどの商品を購入するのか、といったことからよりお客に沿った店づくりを行える。「注文し、受け取るだけ」というイメージのモバイルオーダーだが、導入している店舗はテークアウトだけを行っているわけではない。店内飲食の体験を向上させるためにも活用されている。また、サービス利用者との座談会も定期的に行っており、サービスの改善につなげているという。
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