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ダイバーシティ工場への挑戦 ポッカサッポロが「全ラインの生産を止めてまで」社員総出のイベントを行うわけ(3/3 ページ)

» 2019年11月26日 08時00分 公開
[小山健治ITmedia]
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全員参加のイベントで工場はどう変わったのか

 実際、群馬工場における一連の取り組みは、さまざまな業務に改善をもたらしている。

 例えば外国人スタッフ定着のための取り組みをする前は、夜間のシフトでトラブルが発生した際、現場担当者が誰に相談すればよいのか分からず、近藤氏に直接連絡してくることがよくあった。

 それが全従業員参加のイベントが行われるようになった現在は、部署を越えて多くの責任者や担当者とも顔見知りとなったことから、スムーズに連携が取れるようになった。

Photo 工場内には英語やポルトガル語のあいさつが張ってある

 また、工場内のコミュニケーションが活性化したことで雰囲気が良くなり、海外出身者を含めた全ての従業員のモチベーションが高まっていることを本社も高く評価。ポッカサッポロの他工場でも、群馬工場と同様の全従業員参加のイベントが行われるようになったという。

 社員が自社の工場に誇りを持つようになったのも大きな変化だった。営業担当が取引先に「ぜひ、うちの工場を見に来てほしい」と持ちかけるようになり、工場見学を通じて同社のダイバーシティの取り組みがより深く理解されるようになるなど、「ポッカサッポロ」のブランド力向上にも一役買っている。

 もっとも、どんなに自分たちの工場にスポットが当てられても、近藤氏自身は今回の取り組みを決して特別なものとは捉えておらず、極めて自然体だ。同様に外国人スタッフの採用を検討している日本企業に向けて、次のようなアドバイスを送る。

 「海外出身者だから考え方が異なるわけではなく、そもそも日本人同士でも考え方は一人ひとり違います。さらに言えば、夫婦間や親子間でも違いがあるのは当たり前です。そうした違いを認め合いながら家族が成り立っているのと、本質的にはまったく同じこと。多様な価値観を受け入れつつ、『より良い商品を作る』という1つの思いに従業員のベクトルを合わせることができれば、工場運営はうまくいきます」(近藤氏)

【聞き手:編集部 後藤祥子】

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