未だに「会うことしか考えていない」金融営業を変える お金のデザインが匿名でのお金の相談を始める理由(2/2 ページ)

» 2019年11月28日 11時29分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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匿名で会わずに相談できる「お金の健康相談」

 そこで「お金の健康相談」を強化する。ユーザーの漠然としたニーズに基づいて、適切な専門家とマッチングする仕組みだ。匿名のまま、悩みや収入、家族構成、資産状況などを入力すると、アルゴリズムから専門家とつなげる。チャットで悩みを相談し、具体的なやりとりをしたい場合は、連絡先などを明かして対面でのやりとりにつなげる。

匿名のまま適切な専門家に相談できる「お金の健康診断」

 「ほとんどのサービスでは氏名や電話番号などを入れさせるので、そのあと勧誘があるんじゃないかと不安になる。金融業界は、未だに会うことしか考えていない。会えばなんとかなると思っている。消費者が辟易していることに気づいていない。そこで、仮面をかぶったまま金融データを明かして、気軽に相談できるようにした」(中村氏)

 すでに2万人がサービスを利用し、マッチングする先のIFAやFP、保険相談員など相談先も、40社、500人を超えた。

 今後、金融事業プラットフォームを提供する日本資産運用基盤と組み、IFAやFPが適切なアドバイスを行える機能を提供していく。ポイントとなるのは、機械学習によるテキスト解析だ。チャット内容などを分析し、ユーザーのニーズを分かりやすく提示することで、アドバイザーの効率を上げていく。

「お金の健康診断」の事業構造と今後の展開

ロボアドTHEOとの連携は、しばらく先

 「お金の健康診断」のビジネスは、マッチング先である専門家から月額料金を取るモデルとなる。現状、ロボアドのTHEOとの関係はない。「現状ではマッチングのプラットフォーマーが商品を持つと利益相反が起きる」(中村氏)のがその理由。

 具体的な金融商品を持っているところがアドバイス事業を行うと、どうしてもその金融商品をユーザーに勧めがちになる。それはユーザーが求めている、中立的なアドバイスを損なう。

 将来的に、THEO内で複数の金融商品を取り扱えるようになっていった場合は、利益相反を起こすことなくシナジーを得られるという考えだ。実際、預かり資産が上位5社で17兆円を超えるロボアド先進国である米国では、ロボアドに人間による相談サービスを組み合わせることで、価値を強化してきた。

 米チャールズ・シュワブのロボアド「Shwab Intelligent Advisory」では、2万5000ドル以上の運用をしている人に、人間のアドバイザーへの無制限の相談が可能。業界4位のベターメントの「Betterment Premium」では、手数料を多く払うと公認FPに相談でき、プレミアム以外でもチャットでの相談を可能にしている。

 単なる資産の運用から、専門家に継続的にお金の相談ができる環境へ。急速に変化する金融業界で、有人アドバイスの価値が見直されようとしている。

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