1万2000人以上の月額500円のメルマガ会員を擁し、会員600人を超える月額5000円の有料オンラインサロンを運営する人気ファッションプロデューサーがいるMB(エムビー)さんだ。MBさんは「日本一ユニクロ(商品)を買っているユニクロ研究家」を名乗り、お金をかけなくてもおしゃれができるファッションの面白さや奥深さを令和の時代の人たちに広めている。その支持層の多くは高校生から40代までの若者が中心だ。近年ではオリジナルファッションブランド「MB」も展開している。
新刊『もっと幸せに働こう 持たざる者に贈る新しい仕事術』(集英社)をはじめ、漫画『服を着るならこんなふうに』(KADOKAWA)の原作監修などファッションやビジネスに関する本に多く関わっており、その売り上げは累計100万部を超える。
今回、ITmedia ビジネスオンラインはMBさんに独占インタビューを実施。前編「ユニクロが“1人勝ち”を続ける理由――そのヒントは「着物」にあった」ではユニクロが1人勝ちする理由を、中編「低賃金が問題視されるアパレル業界 MBが見通す“分業化時代”に生き残るための働き方」ではアパレル業界で生き残る働き方を聞いた。今回の後編ではファッションビジネスの変遷や最前線について、思う存分語ってもらった。
――アパレル大手のオンワードが今後600店舗を閉店する方針を発表したことに加え、FOREVER 21も日本から撤退しました。現在のアパレル業界をどう見ていますか。
一言で言うと「オーバーストア」な状態が続いていると思います。大規模小売店舗立地法が2000年に施行され、イオンをはじめとするショッピングモールが全国各地に出てきました。ショッピングモールの論理は非常に簡単な理屈で、この店舗の周辺に何万人の人がいれば、この店とこの店とこの店をくっつければ商売として成り立つよ、といったことを統計的に展開しています。こうしてショッピングモール内に出店したファッションのお店もデータに基づいて経営していくわけですが、みんな「POS分析」をやってしまうわけですよ。どの店でどういう商品が何個売れているかと分析をやり始めるのです。
アパレルでそれをやってしまうと、何が起こるかというと、みんな同じ洋服を作り始めるわけです。「去年白いニットが売れたから今年も白いニット作りましょう」「隣の店が白いニットを売っているから、うちも白いニット作りましょう」ということが起こってしまったんです。
――ファッションで最も重要といえる「差別化」という要素が損なわれてしまったんですね。
消費者からすると、ショッピングモールに行ったら、全部タグが違うだけでみんな一緒じゃん、みたいなことになります。もちろん流行の商品に対するニーズそのものはあるのですが、それを好むお客さんの数は限られています。1年目はそれで売れたとしても、2年目では周りがみんな同じようなことをし出したので、次第に平均して売れなくなってしまいます。それなのに、似たような商品で食いあってしまって、だからお店側としてはどんどん昨年対比がとれなくなってしまったんです。
――その昨年対比を新規出店で穴埋めするという負のスパイラルに陥ったわけですね。
大規模小売店舗立地法でさまざまな場所にショッピングモールができたので、新しく店舗を出せば見せかけの売り上げは作れます。だから、この店がここまで落ちたらまた新しい店舗を作って、という繰り返しのバブルみたいなことをずっとやってきたんですよ。
そのバブルが、いま弾けているんですよね。似たようなデザインのブランドで飽和してしまって、ブランド名は違うけど似たデザインのものであふれかえってしまったわけです。そういったブランドが近年淘汰(とうた)されて、本来あるべきサイズになってきているという状況はあると思います。
結果的に個性のない洋服ばかりになってしまって、だから今は元のサイズに戻っているわけです。非常に厳しいことではありますが、それはやらなきゃいけないことだとも思われますし、恐らくアパレル業界の幹部の方々も認識していることだと思います。
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