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キャッシュレス化で長財布はもうダサい!? ファッションプロデューサーMBが明かす「ファッションと時代」の意外な関係MBが語るアパレルビジネスの近未来【後編】(3/4 ページ)

» 2019年11月23日 19時00分 公開
[河嶌太郎ITmedia]
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キャッシュレス化で長財布が世界的に売れていない

――コレクションの世界と、われわれ一般人の世界はつながっているものなんですね。

 つながっています。1分とか2分で魅せなきゃいけないショーなので、一般の方が見ても理解しがたいような着こなしは少なからずあります。でも、見慣れてくると見方が分かってくるんですよ。

――どういった部分に着目するべきなのでしょうか。

 実はアイテム単体で見ていくと面白いんですよ。確かに全体として見ると、この格好をして街を歩いていたら絶対「職質」される、みたいなものがあるのはその通りです。でも、一つ一つのパーツ、例えばパンツのこのシルエットめちゃくちゃかっこいいな、とか、今着ている上半身は胸が透けているけど、普通にTシャツと合わせるとかっこいいよなとか、アイテム単位で見ると気付くものがあります。

 ファッション全体で見ると、多くの人が思うように極めて理解しにくくなっているのはあると思います。けど、一つ一つのパーツを分解して見ると、実は私たちのファッションと完全に地続きだということが見えてくるんです。

――ファッションから今の時代性を感じることはありますか。

 時代とファッションというのは、多少リンクしている部分があります。例えば、暗い時代のファッションはちょっと明るい色が好まれるといった話もあります。

 今のトレンドで起こっていることは、SNSの普及がファッションに影響を及ぼしているというのがあります。Instagramをはじめとして、SNSに写真をアップする習慣が世界的に盛んですけど、それによって派手なものが今トレンドになっています。まさしく「インスタ映え」するファッションというわけですね。

 例えば、ただ単に無地の白Tシャツを着ていても、なかなかそれだけだと「いいね!」を押せないと思うんです。だけど、ここに「BALENCIAGA(バレンシアガ)」ってブランドの名前が書いてあったら「いいね!」が押せるんですよ。だから、装飾だったり分かりやすいロゴだったりといったものの需要がいますごく出てきています。

 この動きをトレンド的に言うと、無地が流行ったからいま派手なものが流行っている、という波もあるんですが、SNSの普及のせいで、みんなが画像で「いいね!」を押したくなる服を、それぞれが欲しがっている文化になっているという状況があります。

――服以外のアイテムの部分では、そういった時代性というのはあるのでしょうか。 

 テクノロジーの進化によって、アイテムが変化することもあります。例えばいま表参道のLouis Vuitton(ルイ・ヴィトン)やGUCCI(グッチ)とかに行くと分かるんですけど、財布が明らかに小さくなっているんですよ。

 昔はルイ・ヴィトンの長財布をお尻のポケットから外に見せるのが「かっこいい」と思われていたのですが、いま長財布が世界的にあまり売れなくなっている。理由は「キャッシュレス化」です。財布にお金をあまり入れなくてもよくて、カードで決済できるのが当たり前だから、海外では財布のサイズがどんどん小さくなっています。日本ではまだ長財布も人気みたいですけど。

――ファッション1つでも、いかに日本のキャッシュレス化が世界的に遅れているのが分かるのですね。

 財布のサイズが小さくなると、今度はそれを入れるバッグも小さくなっていきます。ですからコレクションに出てくるブランドでいま売れているものは、財布もバッグも小型化しているんです。テクノロジーが進化することで、ファッションにも影響を与えてトレンドにも影響を与えているっていう状況を見ると、やはり社会とリンクしているなって思うところでもあります。

phot 昔はルイ・ヴィトンの長財布をお尻のポケットから外に見せるのが「かっこいい」と思われていたが……(写真提供:ゲッティイメージズ)

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