――日本の場合、クールビズなどをはじめとして、フォーマルとカジュアルのバランスも少しずつ変わってきていると言われています。
確かにフォーマルとカジュアルの境界線が少しずつなくなってきているのはあると思います。ビジネススーツを見ても、最近では肩パッドが入っていなくて、シワにならないカジュアルスーツみたいなものを着て出勤する人も増えてきましたし、街でそのスーツにTシャツとスニーカーを合わせる人も出てきています。
スーツそのものが仕事をするときに着るものっていう感覚が少しずつずれてきて、スーツ自体がカジュアルになってきている、というのはあると思います。
実は歴史をひも解くと、スーツってそもそもフォーマルだったりカジュアルだったりを繰り返して変化していっているものなんですよ。
例えば今われわれが着ているビジネススーツとかドレススーツって、数十年前はカジュアルなものだったんです。もともとは燕尾服やモーニングなど着丈の長いものがフォーマルなもので、短くしたものが今のスーツになるのです。
――今のスーツも、もともとはカジュアルなものだったのですね。なぜ着丈が短くなったのでしょうか。
今のジャケットの原型はスモーキングジャケットって言うんですけど、スモーキングっていうのはそのままタバコを吸うときのことを指しています。
スモーキングジャケットが流行った当時、タバコが大流行していました。最初は燕尾服とか長い着丈のものでタバコを吸っていたんですけど、タバコを吸うときって外で座るじゃないですか。着丈の長いまま座ると汚れたりシワになったりするから、それでタバコを吸うときには着丈が短いほうがいいんじゃないかということで、カジュアル化したのがスモーキングジャケット、すなわち今のスーツの原型なんです。
ただ、当時はスモーキングジャケットのような短い丈のジャケットを着るのはあくまでカジュアルで、フォーマルな場では礼を逸したファッションだったんです。
――それが今では立派なフォーマルなファッションとされています。
ドレスだったりカジュアルだったりの概念って、10年ぐらいだと変わりませんが、30〜40年ぐらいのスパンで見るとぐっと変わっていることもあります。何がフォーマルで何がカジュアルかというのは時代によって変化するものなので、もしかしたら今のスーツがこれからはカジュアルな服装というふうに変わるかもしれません。
もしそうなって、スーツは街でラフに着るもの、と認識されるようになると、今度はそれに代わるフォーマルな着こなしが出てきます。今のスーツが今後もっとカジュアルに認識される時代が来るのかもしれないと、今の流れだと僕は思いますね。
河嶌太郎(かわしま たろう)
1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。アニメコンテンツなどを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「週刊朝日」「AERA dot.」「DANRO」「Yahoo!ニュース個人」など雑誌・ウェブで執筆。ふるさと納税、アニメ、ゲーム、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。共著に『コンテンツツーリズム研究〔増補改訂版〕 アニメ・マンガ・ゲームと観光・文化・社会』(福村出版)など。
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