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» 2019年12月03日 06時00分 公開

調査データから明らかに:就活で「やりたいこと」は本当に必要か――学生が企業に“幻滅”しないために (2/4)

[小林祐児,パーソル総合研究所]

学生の2割は就活終了後も「やりたいこと無し」

photo 図1 学生の就職活動開始時期と、「将来のやりたいこと」の決定時期(パーソルキャリアとCAMP調査)

 【図1】は、就活経験した学生に「将来のやりたいこと」が決まった時期を聴取したデータです。単純な折れ線グラフですが、ここからはいくつかのことが見えてきます。

 まず、多くの就活生は、仕事を通じてなにかしらの「やりたいこと」があってそこから就活を始めるのではなく、就活を開始してから「やりたいこと」の輪郭をつかんでいっています。大学3年生の秋-冬にインターンを中心に本格的に就活をはじめ、その後に「やりたいこと」が徐々に固まってくる格好です。

 しかし、最終的に就活を終え、入社企業が決まっていてもなお「やりたいこと」が見つかってはいない学生も2割弱存在します。この数字が多いか少ないかは意見が分かれそうなところですが、常識的な感覚とはあまり乖離していないデータでしょう。

 ここで、議論の補助線として、就活における「やりたいこと」の意味をすこし俯瞰的に考えてみます。90年代後半以降、就活はあふれる過剰な情報との戦いになりました。ネットを検索すれば、就活メソッドから各業界の情報まであらゆる情報であふれています。企業口コミサイトも多く存在し、リアルな業界別のセミナーも数多く開かれています。

 ナビサイトであらゆる企業に応募できるようになったネット時代の就活は、「全ての選択肢を調べてから、自分にあったベストの業界・企業を決める」ということは到底できません。かの有名な「ジャムの法則」が明らかにするように、多すぎる選択肢は、逆に人の選択を「不可能」にします。

 つまり、現代の就活では、どの業界・希望を志望するかを決めるより「前」に、そもそも「どの業界・企業の情報をとりにいくのか」を決める必要があります。そうでなくては、どんな情報も、検索ワードを打ち込むことすらできない、ただ流れ去る「情報の渦」です。この、いわば〈選択前-選択〉として、自分の側にある興味、好きなこと、ひいては「やりたいこと」を必要とするのです。

 かつては、社会に働き方の安定したモデルが存在し、学生は、眼の前のある程度限られた選択肢を通じてその「社会人」の世界に入っていきました。現在、膨大な情報を前にして、「自分の内面」をまず見つめ、コミットできる/すべき選択肢を「自ら作っていく」ことが必要になります。ここに、自分の内面の声=「やりたいこと」が決定的に重要になった背景があります。

 60年代から90年代にかけて起こったこうした就活の変化を、教育学者の溝上慎一氏はかつて、「アウトサイド・イン」から「インサイド・アウト」への変化だ、と表現しました。安定した「外の世界(アウトサイド)」に自分が入っていく(イン)のか、「自分の世界(インサイド)」から「出ていく世界(アウト)」を選ぶのか、という違いです。就職情報産業のさらなる進展は、そうした流れを今も加速させています。この変化に伴って「自己分析」が流行し、「やりたいこと探し」が就活の第一歩、〈選択前-選択〉として定着しました。

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