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就活で「やりたいこと」は本当に必要か――学生が企業に“幻滅”しないために調査データから明らかに(1/4 ページ)

» 2019年12月03日 06時00分 公開
[小林祐児パーソル総合研究所]

編集部からのお知らせ

 本記事はパーソル総合研究所のコラム・レポートから抜粋・転載したものです。


 2021年卒の学生の就活が、一気に騒がしくなってきています。就活をスタートさせた時期、インターン参加や業界研究などを初めたころの学生と話すと、「自分のやりたいことが分からない」「興味ある業界が特に無い」といった迷いの声をよく耳にします。

 この就活における「やりたいことの無さ」は、面接のやり方やエントリーシートの書き方といった就活ハウツー「以前」の悩みです。学生の苦悩の中でもアドバイスが難しい悩みですが、実は、このことが悩みとして顕在化することには、社会的な背景があります。本稿では、この学生を悩ませる「やりたいこと」探しがもつ構造的な困難と、その乗り越え方について、独自調査のデータを元に考えていきたいと思います。

photo 就活中の学生にありがちな「やりたいことが無い」問題(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

売り手市場の就活における「リアリティ・ショック」問題

就活のゴールを目指すにあたって、将来の「やりたいこと」が明確になっていることはやはり重要です。ここで言う「就活のゴール」とは、単純な「内定獲得」という意味ではなく、入社後に訪れる「事前イメージとのギャップ」を防ぎ、仕事人生への充実したスタートを切ることです。

 売り手市場にある日本の就職において最も重要な問題は、「内定が1つももらえない」ことよりも、入社後に起こる「こんなはずじゃなかった!」という事前イメージとのギャップにあります。人気企業の内定獲得は相変わらず高倍率ですが、たとえ第一志望群の企業に受かったとしても、もともと抱いていた企業のイメージが不正確なら何の意味もありません。現実から乖離したイメージで志望した企業ですから、本来なら応募すらしなかった可能性もあります。

 入社後に感じる現実とイメージとのギャップは、「リアリティ・ショックReality Shock」と呼ばれ、経営・組織論において多くの研究が蓄積されてきました。この入社後のショックの可能性を直視しない就活は、例えるなら、人気アーティストのライブに行きたい人が、「入場チケットを手に入れる」ことだけを目的に一喜一憂しているようなものです。本当に大切なのは、開演後に待っている「楽しいライブの鑑賞」という経験そのもののはずです。

 入社後の「こんなはずじゃなかった」という何らかのイメージ・ギャップは、8割近くの新入社員が経験することも和かっています。そこで本稿では、この入社後のリアリティ・ショックを防ぐためにはどのような就活をすればいいのか、そしてそのことと、「やりたいこと」を持つということの関係を見ていきたいと思います。

 では、今の大学生にとって「将来やりたいこと」とは、どの程度見えているものなのでしょうか。まずは、その実態を我々がパーソルキャリアのキャリア教育支援プログラムCAMPと共同実施した調査データ(※)から見てみましょう。(※全国の大学1-4年,社会人1-3年生合計1700人を対象とした定量調査)

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