今後、キャッシュレス決済を利用するお客さまが40%となった場合、コスト増加額は14億円となります。
一方でキャッシュレス決済を導入したことで客数と利益が増加し、その増加額が14億円を上回れば実質的なコスト増加を補えると考えることもできます。
サイゼリヤの客単価は735円です。原価率は36.2%なので、1人当たりの売上高735円から1人当たりの売上原価266円を引いた粗利益は469円となります。では、14億円の利益を得るためには何人のお客さまを獲得しなければならないかを考えていきます。
コスト増加額14億円÷1人当たりの粗利益469円=必要獲得客数約300万人
つまり、キャッシュレス決済導入によって年間300万人のお客さまが増えれば、理論上はキャッシュレス決済導入による手数料コスト14億円を賄うことができるのです。300万人と聞くと途方もない数だと感じるかもしれません。しかし、サイゼリヤの店舗数は1093なので、1店舗当たりの月間客数に換算すると200人程度増えればOKということになります。
今後キャッシュレス決済が進んでいく時流を踏まえると、決して不可能な数値ではないような気がします。最近では、サイゼリヤも一部店舗においてキャッシュレス決済を試験的に導入し始めています。
今回は分かりやすく粗利益で必要客数を割り出しましたが、実際の飲食店経営では売上原価以外にも家賃や水光熱費、備品費用等さまざまなコスト(固定費と変動費)がかかりまし、1000店舗を超えるサイゼリヤの店舗にキャッシュレス端末を設置するためのコストも発生します。こうした事情を考えると全店でキャッシュレス決済を導入するのは簡単ではありません。
今まで数多くの魅力的な商品開発と技術改善によって、品質や生産性の向上を実現してきたサイゼリヤ。時流であるキャッシュレス決済への対応においても同社の経営手腕が注目されます。
三ツ井創太郎
株式会社スリーウェルマネジメント。「飲食店年商10億円最速突破経営塾」を主催。大学卒業と同時に東京の飲食企業にて店長などを歴任後、業態開発、FC本部構築などを10年以上経験。その後、東証一部上場のコンサルティング会社である株式会社船井総研に入社。飲食部門のチームリーダーとして中小企業から大手上場外食チェーンまで幅広いクライアントに対して経営支援を行う。2016年に飲食店に特化したコンサルティング会社である株式会社スリーウェルマネジメント設立。代表コンサルタントとして日本全国の飲食企業に経営支援を行う傍ら、日本フードビジネス経営協会の理事長として店長、幹部育成なども行っている。著書の「飲食店経営“人の問題”を解決する33の法則(DOBOOK)」はアマゾン外食本ランキングの1位を獲得。
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