1杯750円の“レトロ喫茶” 但馬屋珈琲店が売り上げV字回復できたわけ立役者は元プロ格闘技選手(1/4 ページ)

» 2019年12月12日 07時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

 新宿西口付近に位置する「思い出横丁」。終戦直後の闇市をルーツに、今ではインバウンドの人気も集める東京屈指の“飲み屋街”に成長した。この横丁にある、ただ1つの喫茶店「但馬屋珈琲店 本店」は、1964年創業の老舗純喫茶、いわゆる「レトロ喫茶」だ。もともと婦人洋品店を運営していたが、駅前に百貨店ができたことでお客を奪われ、喫茶店にくら替えしたのだという。

思い出横丁唯一の「レトロ喫茶」

 系列店を含めて最大で7店舗を展開していた但馬屋珈琲店だが、数年前に2店舗を閉店するなど、売り上げが急降下した。但馬屋珈琲店だけでなく、喫茶店業界全体へは逆風が強く吹いている。東京商工リサーチ(東京都千代田区)の調査によると、2019年の喫茶店倒産件数は過去最多ペースだ。1〜8月の期間で42件が倒産している。

 「レトロ喫茶」というと、いい意味で時代に迎合せず、“我”を貫くイメージがある。チェーン店では「効率化」の下で切り捨てられるような一種「ムダ」ともいえる要素も多くなりがちだ。「安さ」を追求することが難しい業態であるといえる。そんな中でも但馬屋珈琲店は売り上げをV字回復。以降も着実に成長を続けているという。

 最近ではコーヒーを飲むだけであれば、コンビニで格安に手に入る。増税があり消費者の目も厳しくなる中、ブレンドコーヒーが1杯750円(税込)の但馬屋珈琲店は、どのようにしてV字回復を成し遂げたのだろうか。但馬屋珈琲店を運営するイナバ商事(東京都新宿区)へ15年に入社し、さまざまな戦略を手掛ける倉田光敏氏に話を聞いた。

但馬屋珈琲店の外観
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