まとめると、この時期からフィンテックについての話が始まりました。その前から、米国ではピア・ツー・ピア融資というのが流行り始めていて、最大のものがレンディングクラブでした。米国では、10年代初めは融資が滞っていたんですね。そこで、「お金を持っている人が借りたい人に貸せばいいのでは」という発想が出てきました。
本来、こうした事業は国がコントロールしてきたのですが、逆に「規制下にある銀行業だけを頼りにしていては黒字倒産の中小企業が出てしまう」という声もあった。そこでインターネットを使って、ヤフオクみたいな形でお金を借りるということが起きていました。その人たちが銀行にライバル視されたのが14年なんです。
日本もそうですが、海外も金融のキモって銀行業なんです。そのとき、銀行業が他産業をライバルと捉えることってなかなかありません。基本的には銀行は規制業種で、認可を受けるところに限られた権益みたいなものがあるからです。でもピア・ツー・ピア融資は、そこをひっくり返して話が進むということで盛り上がったんです。
米国はもともと70年代から、銀行の機能を証券会社が代わったり、住宅ローンを(窓口は銀行ですが)年金や個人が貸したりということがずっと続いていたんです。
でも銀行業務の最初のフェーズである「融資」というところまでピア・ツー・ピアでやり始めたので、「銀行は面を取られるよね」と言われるようになりました。
銀行側は、「面を取られるんじゃないか」「土管になってしまうんじゃないか」という恐怖がありました。土管とは、入口と出口のサービスを他に押さえられ、銀行には情報の流通機能だけが残ることを指します。銀行業が機能的に閉じている限り、土管になるし、機能じゃなくて体験を提供するものであれば面を取れる。
体験を作るのはすごく難しいので、UberのようにPDCAをオープンにして高速で回している人たちだけが体験を提供できるんです。でも機能は、専売特許というかライセンスが必要なものなので、銀行とサービス開発企業が貸し借りみたいな関係を何年もかけて、なんとなく認めてきた。それが銀行から見たときのフィンテックです。
サービスを開発する企業は、悪意をもって銀行を土管化しようとしているわけではありません。
例えばiPhoneでは、「メールソフトはGmailのほうが便利だ」と思う人もいて、ユーザーはAppleのアプリをあまり使いません。結局、AppleやGoogleが作るのは「機能」で、その上で動くアプリは第三者が作ったほうが便利になるんだという世界観があります。
こうした世界観が金融に適用され始めたというのは、とても大きな変化です。「誰がアプリを作るか分からないじゃないか」みたいな話になりますが、それを政府なり消費者なり、銀行なりがどう受け入れていくかという過程が、フィンテックだということです。
(続く)
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