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ワタミの「ホワイト企業化宣言」は本当なのか? データから徹底検証する離職率は大幅に改善(2/4 ページ)

» 2019年12月17日 06時00分 公開
[新田龍ITmedia]

「ブラック企業」を認めたワタミ

 業績悪化を目の当たりにして危機感を強めたワタミは、ついにこれまで頑として認めなかった「ブラック企業」との批判を受け入れ、業績悪化の一因と認識するに至る。

 まず13年6月、「今一度、各職場において、グループが大切にしている理念に基づいた運営がなされているかという点について客観的で公平な立場から確認し検討」することを名目とし、「外部有識者による業務改革検討委員会」を設置。計6回の委員会が開催され、14年1月に報告書として提出された。その内容は今現在でもワタミのWebサイト上で確認できる。

 当該報告を受け、ワタミは労働環境改善のための取り組みを実行していくことになった。具体的には次の通りである。

「ホワイト企業化」の礎となった文書(出所:ワタミ公式Webサイト)

(1)店舗数削減および営業時間見直しによる従業員負担の軽減

対応:労働環境改善を優先するために、人員体制に見合った店舗数の再設定が必要と判断。そのため、全体の店舗数の約1割相当に当たる60店舗を14年度中に閉鎖、撤退することを決定した。店舗数削減により、約770人の従業員(100人の正社員、1人1日8時間換算で670人相当のアルバイト)を近隣の他店舗に振り分けることで、残存店舗の人員不足を穴埋め。この再配置により、1店舗あたりの平均社員人数は従前の1.66人から1.83人となり、多少の余裕が生まれた。また、来店の少ない時間帯の営業時間を短縮することによる総労働時間の削減も実施した

(2)会議・ミーティング・研修時間の効率化

対応:会議やミーティング、研修など、営業現場以外の勤務時間削減および効率化を行い、労働時間を有効に活用することで、1人当たりの総労働時間の削減を見込んだ

(3)メンタルヘルスサポート

対応:14年5月から、全国各地の従業員が利用できるメンタルヘルス相談窓口を設置。また、新入社員を受け入れる拠点の拠点長に対するメンタルヘルス研修も実施。その後も管理職、非管理職へと順次社内研修を行い、自身もしくは部下の健康管理に関する知識・認識を高めていった。さらには新入社員を対象として、職場の上司以外で気軽に身の回りのことを相談できる相手として、本部の先輩社員をマンツーマンで配置し、会社全体で新入社員をサポートする体制をとった

(4)コンプライアンス強化

対応:労働環境改善とコンプライアンスの順守強化をすべく、外部専門家も交えた「コンプライアンス委員会」を常設。実行団体として「業務改善委員会」を設置し、各現場での改善計画を推進し、実施状況を観察する役割を担う。委員会メンバーは、ワタミ人材開発部門の管掌役員を委員長とし、各グループ会社の人材開発部門責任者、人事企画部門責任者が委員となることでグループ横断的な組織とし、現場課題、そしてコンプライアンス順守状況を共有。また若手社員や女性社員をオブザーバーに加えることで、より現場目線の提案を反映できるような運営体制としている

(5)中長期的な取り組み

対応:短期的な人員不足に対する取り組み、コンプライアンス経営の強化に加え、次のA〜Cについても検討を進めることで、従業員の働きやすい労働環境の構築を進めた

 A:評価・報酬体系の改善

 頑張りを評価し、報酬に反映することによって従業員の働きがいがさらに高まるとの考えから、評価・報酬体系の抜本的な見直しも含め、従業員の意欲向上に資する施策を検討すること

 B:人材育成の強化

 労働時間の削減に伴い、会議・研修時間の効率化を図るため、職種や職位に応じて必要となるビジネススキルを、個々の従業員のキャリアプランに応じて学べる機会を提供できるように整備していくこと

 C:働き方、入社ルートの多様化への取り組み

 今後の少子高齢化を見込んで、旧来的な日本人男性を中心とした運営体制を見直し、働き方、働き手の多様化を進める。具体的には「女性や外国人などの迎え入れ」「時短勤務導入」「地域限定社員導入」「障害者雇用」などを検討していくこと

 これらの取り組みの結果を測る指標として、ワタミは「離職率の低減」を設定。14年4月入社の新入社員において、「3年後離職率が30%以下」を目標として取り組みを始めた。

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