2013年から約6年間にわたってワタミの経営からしりぞいていた創業者の渡邉美樹が19年10月から代表取締役に復帰した。同社の労働環境改善は渡邉が不在中のことであり、世間からは「またブラック企業に逆戻りするのでは」などとうわさされているようだ。
しかし、筆者は復帰がリスクになるとは考えていない。既にこれまでのホワイト化路線で成果が出ており、業績も回復していることから、あえてブラックにする必然性がないためだ。そもそも今回の復帰自体も渡邉本人の意向ではなく、政界引退発表以降、他の外食企業から渡邉に顧問オファーが殺到したこともあり、ワタミ側から「他社に行かれると脅威になるので、ぜひ当社に」と依頼したことによるものだ。
実際、企業が働き方改革を実践するにも、そしてホワイト企業であり続けるためにも利益が必要だ。渡邉不在の期間、ワタミの経営陣は渡邉が立ち上げた事業を維持するだけで精一杯の状況であり、新たな事業は何も立ち上げることはできなかった。
一方で渡邉は復帰直後から、東日本大震災の被災地で新たな農業観光施設開設を打ち出すとともに、今後の為替動向を見込んで国産食材の輸出ビジネスなどにも進出していくなどの方針を明らかにしている。ホワイトな労働環境を維持しながら、ワタミをさらに成長路線に乗せることができるか、渡邉の腕の見せ所といえよう。
働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト
早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。労働環境改善による企業価値向上のコンサルティングと、ブラック企業/ブラック社員関連のトラブル解決を手掛ける。またTV、新聞など各種メディアでもコメント。著書に「ワタミの失敗〜『善意の会社』がブラック企業と呼ばれた構造」(KADOKAWA)他多数。
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