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2020年「正社員の年収激減」の恐怖 賃下げの意外なターゲットとは“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2019年12月17日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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企業が基本給を上げてこなかったツケ

 本来、企業の労働者というのは、労働力を企業に提供する代わりに対価をもらうという関係であり、本人がどのような私生活を送っているのかについては賃金とは関係しない。従って組合と会社の交渉においても、基本給とボーナスがいくらなのかが焦点となるはずだが、企業は利益を最優先するので、当然のことながら基本給の昇給にはなかなか応じない。

 企業の社内規定にもよるが、基本給を上げてしまうと退職金の算定などにも影響するので、経営陣としてはできるだけ手を付けたくない。このため労使交渉では、手当の増額が落としどころになるケースも多く、これが手当を増やす原因となっていた。

 公務員にもこうした手当が多く、以前、失業者と接すると精神的なストレスが大きいとして、ハローワークの窓口業務に従事する職員に手当を支給していたことが問題視されたり、ある自治体で課長に昇進できない職員に対して手当を支給していることが批判されたりした事例があった。民間企業でも意味がよく分からない手当が支給されているケースは少なくないはずだ。

 本来であれば、こうした無意味な手当は廃止し、基本給として労働者に支払うべきだが、今となっては、これらの手当が格好の賃金削減策になろうとしている。公務員は民間とは正反対に、毎年、賃金が上がっているので大きな問題は起きないだろうが、民間企業の場合には、各種手当が逆に労働者の首を絞めることにもなりかねない。

 ちなみに20年4月からはサラリーマンの控除の基準の見直しも実施されるので、年収850万円以上の給与所得者は事実上、増税となる。一方で、消費者物価指数は上昇を続けており、1万円で買えるモノの量は、毎年、着実に減っている。支出の切り詰めには限度があるので、生活防衛の手段としては、やはり副業など収入を増やす方法を考えるしかないだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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