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「5G」が話題の一方で、会社を悩ます“働かないおじさん”の「50G」問題「超高遅延」のおじさんたち(4/4 ページ)

» 2019年12月19日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]
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50Gは企業の「絶縁体」

 「50G」は「超低遅延」を強みとする5Gの真逆で「超高遅延」だ。つまり、伝えたいことが相手にすぐに伝わらず、理解されない。以下の会話例を読んでほしい。

「部長、新事業の企画書を読んでもらえたでしょうか。もう2週間も返事をいただいていません」

「2週間って? そもそも返事しなければダメだったのか」

「何を言ってるんですか。時間がないって、念を押しましたよ」

「そうだったか? ま、読んだけど、ダメだ。こんな内容で、新事業を任せられない」

「え? こんなに待たせておいて何を言ってるんですか。以前も話した通り、メンバー6人ともやる気になってるんですよ」

「だいたい、こんな予算どこにあるんだ? もっと考えて企画書を作れ」

「予算は確保できます」

「ダメだ。こんな内容じゃあ、経営陣からゴーサインはもらえん」

「専務には了承をもらってます」

「え、専務に?」

「そうです」

「専務が了承してる? それ、はやく言ってよ」

「企画書に書いてあったじゃないですか。読んでないんですか」

「……」

 レポートラインの中継地にいるだけの中間管理職が、このように「早とちり」したり、「結果ありき」で話していたりしたら、いつまでたっても話が前に進まない。先日も、別のクライアント企業で「そういうことは俺じゃなくて、部長に聞いてよ」と言って、まるで意思決定しない課長がいた。「部長が、課長に聞けと言ってるんです」と部下が食い下がっても、「いやいや、俺じゃなくて部長だよ。絶対に部長だ。部長に聞いてくれ」と言って譲らなかった。自分では何も決められないような、こんな「絶縁体」のような中間管理職がいたら、組織そのものが「超高遅延」の状態になってしまう。

50Gは組織の「絶縁体」になってしまう(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

50Gの責任は会社にも

 5Gは、ビジネスにおいて「破壊的イノベーション」をもたらすといわれている。しかし50Gは、「破壊的現状維持」をもたらすだろう。しかし、50Gの大半は、組織の功労者だ。現在会社への貢献度が低いからといって、リストラ対象にするのは身勝手すぎる。

 話を社長とのランチに戻そう。コースランチのメインディッシュが運ばれてきた。国産黒毛和牛のステーキだった。社長は一度箸を持ち上げたが、ため息をついた後、そっと箸をおいた。そして、「うまいものばかり食べていると、ありがたみがなくなってくる」と言った。「感覚がまひしてくるんだ。これだとよくない」社長がそう言うので、私はうなずいた。社長が言いたいことは、何となく分かった。

 会社が、50Gを突き放すのは簡単だ。しかし、そのようなぬるい環境に身を置かせ、感覚をまひさせた会社にも責任がある。50代になってからでは遅い。40代、いや30代のころから、将来のキャリア形成と、それに見合った教育や啓発を、会社が責任もってしていかなければならない。今はそういう時代だと、しみじみ思う。

著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。メルマガ「草創花伝」は4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。


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