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洪水被害から小売店舗を早期復旧 日本企業の「Microsoft Teams」活用事例業務を効率化するITツールの最新事情(2/3 ページ)

» 2019年12月26日 07時30分 公開

現場ではどのように活用されているのか

 個別のソリューションはいろいろあるものの、Teamsの基本的な使い方はチャット機能による情報共有だ。三井物産の事例では、経営会議の在り方を変えるなかでTeamsが活用されている。同社では幹部会にかける資料の作成において、ドラフト作成段階から会議までの過程で、関係メンバーに負荷がかかっていた。これをデジタル化することで、事前準備を含む会議の時間を半減させるケースもあったという。

 以前まではローカル上でファイルがやりとりされていたため、バージョン管理の問題を含め、合意を得るまでの作業が一苦労だった。それをTeamsに置き換えたことで、関係者の間で事前にすり合わせが行われた状態でそのまま資料を会議に持っていくことができ、大幅に効率化されたという話だ。

 接客業務でTeamsを活用する事例もある。三越伊勢丹のケースでは、特定の顧客に張り付いてコンシェルジュ的に案内するスタッフの間でTeamsによる情報共有が行われている。

 従来、接客はフロアや商品単位で縦割りだったが、顧客の属性に合わせた横串での提案を行うために、部署を越えた情報連携で対応するように変化した。現在もなお商品単位で管轄が分かれているものの、それを提案型接客のためにマトリクス構造で情報を管理し、必要であればすぐ該当のフロアにアクセスできるようPower Appsを活用してバックエンドで対応できる仕組みを構築したという。

 また、こうした百貨店で使われるマネキンなどの道具は、以前はスケッチを描いて管理していたが、写真を撮影して共有できるTeamsによって管理の手間が掛からなくなったともいう。さらに、部署間の情報共有がメールからTeamsに置き換えられたことで、過去データの蓄積が可視化され、知見がたまりやすいというメリットもあるそうだ。

 三越伊勢丹のケースは、現場作業を担当するスタッフ(いわゆる「ファーストラインワーカー」)向けの取り組みだが、小売関係だけでなく、製造現場や保守点検、ヘルプデスクの対応においてもTeamsが活用されることが多いという。

 例えば、情報を入力する仕組みはPower Appsで構築し、これを登録するとTeams上にスレッドが自動的に立てられ、障害や問題対応の管理状況はDynamicsなどのフィールドサービスのアプリケーションで可視化される。データはAzureのクラウド上に蓄積され、後々ダッシュボードなどを介して分析にも使えるため、Teamsを軸に情報をため込んで活用するといったことが可能になる。

日本マイクロソフトが公開しているTeamsの事例群

 部署間連携という文脈では、倉敷中央病院の事例が面白い。

 日本では、いわゆる主治医制度という形で特定の医師が1人の患者の面倒を見るケースが多いが、総合病院では1人の患者が複数の医療科にかかるケースもある。こうした複数の医師と看護師らが医療チームを編成し、部署をまたいで患者に対応する際にTeamsが有用だという。例えば、患者の個人情報自体は電子カルテに保存されているものの、カルテに入力するほどではない細かな情報や連絡事項はTeams上に書き込んでいき、患者視点で部署間連携を行うといった具合だ。

 日本マイクロソフトによれば、日本は世界平均からみて、医師1人当たりが抱える患者の数が多く、主治医制度で患者の面倒を見るのは限界があるという。こうした流れで出てきたのがチーム医療で、これにTeamsを活用していこうというのが同社の提案だ。

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