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国の支援も手遅れ……「就職氷河期第一世代」の女性が味わった絶望とはロスジェネ女子の就職サバイバル(2/4 ページ)

» 2020年01月06日 07時00分 公開
[菅野久美子ITmedia]

「バブルの名残おじさん」におごられる日々

 可愛らしいルックスで、おっとりとした話し方をする女性である。律子さんは、地方の高校卒業後、学校の推薦で「特に苦労することなく」大手旅行会社に就職した。当時の手取りの収入を聞いて驚いた。なんと手取り30万円だという。そして律子さんは寮生活だったため、生活費もほぼかからなかった。

 「当時はまだ高卒をいっぱい採用する流れがあったんですよ。氷河期といっても、『バブルの名残おじさん』という人たちが周りにはいっぱいいました。お財布がなくても、ご飯を食べているとおじさんたちが伝票持って行ってくれて、ワインも持ってくれる。不景気なんて全然という感じで、怖いものなしでしたね」

 同じ氷河期世代なのに、時期や就職先によって見えている世界はこんなにも違うのかと愕(がく)然とさせられる。律子さんは、20歳で結婚して2人の子供を出産。当時は寿退社が当たり前で、夫も高卒上京組だったが、勤務先が一部上場企業なので生活に不自由はなかった。

 「保育園に預けて働くという選択肢はなかったんですよ。やっぱり子供が小さいときはそばにいてあげたいから。自分が満足するまで一緒にいたかった。周りは専業主婦が多かったんですね。腰掛で就職して本当にゆったりしたんだなと思いますよ。それが流れで当たり前だったんです」

 筆者の同世代の氷河期世代の夫婦は、周囲では共働きが多く、「ずっと子供のそばにいてあげたい」と思っても、それがかなわない同世代もいる。夫婦二馬力でないと、とてもではないが経済的に家庭を維持できないからだ。しかし、夫が高卒で公務員だったり、専門性の高い職種で安定した年功序列型の給与水準だったら、一気に勝ち組になる。

 律子さんが、「こんなはずじゃなかった」と感じたのは、8年後に夫と離婚してセカンドキャリアの道を歩んだ時だった。働きたいという思いもあり離婚の1年前から福祉関係の仕事の働き口を見つけたが、正社員でも額面で年収380万円――。8年間勤務したが、年収ベースでわずか30万円ほどしか給料は上がらなかった。

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