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国の支援も手遅れ……「就職氷河期第一世代」の女性が味わった絶望とはロスジェネ女子の就職サバイバル(3/4 ページ)

» 2020年01月06日 07時00分 公開
[菅野久美子ITmedia]

二極化進むロスジェネ女子

 バス会社時代はいくら遊んでいても、100万円は貯金できた。専業主婦で社会に出たとしても、まだ20代後半だし、職場復帰すれば年相応の若いころに夢みていた大人の暮らしをできると思っていた。だから高卒で就職した段階でロスジェネを実感することはなかったが、離婚で歯車が狂った。

 「今の人たちを見て、本当によくやってるなと思います。私がもし今子供を身ごもっても、産むという選択肢はゼロですね。今の時代で育児をするというのはすごく大変だと思います」

 律子さんが言う個人的な誤算は離婚だが、子育て後に放り出された社会の現状があまりに様変わりしていたのも事実である。彼女はその後転職したが、その先はブラック企業で心を病んで退職。現在、サービス業のアルバイトとして働いている。時給は1050円で上がる見込みはない。かつて夢見た「年相応の給料」からは程遠い……。

photo 国の就職氷河期世代支援プログラム(内閣府Webサイトから引用)

 政府は、「就職氷河期世代」の正規雇用者を3年間で30万人増やすことを目指して、650億円を上回る財源を確保。19年度の補正予算案におよそ30億円を計上し、「就職氷河期世代」の支援に積極的な自治体への交付金を創設するバラマキ政策をやるようだ。この交付金を運用する新たな部署を内閣府に設置するそうで、西村康稔経済再生担当大臣は、「上から目線ではなく、現場の声に耳を傾けてほしい」と職員らに訓示したというが、ガチで当事者に寄り添う気はないだろう。

 私の周囲のロスジェネ女子たちは、すでに二極化が進んでいる。年功序列の会社に就職できた人や何とか会社でポジションを得た者(それでも給与体系の不満は大きい)、そして派遣やアルバイトなどで食いつなぎ、諦めモードながら婚活で二馬力生活を夢みる人たちだ。

 貧困で生活保護へと移行する人たちも徐々に出始めている。

 当時、就職活動やその後の人間関係に疲れ果てたロスジェネ女子たちの間では、『就職鬱』という言葉がひそかに流行っていた。そのぐらい就労に関しては、思い出すだけでもつらい経験を持つ人が多い。

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