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インタビュー
» 2020年01月28日 08時00分 公開

業務を効率化するITツールの最新事情:イスラエル発の急成長企業、WalkMeが提唱する「DAP」とは? (1/2)

従業員のアプリケーション操作におけるストレスを解決するDAPは生産性向上の特効薬になるか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 コンピュータの機能向上とともに登場したビジネスアプリケーションは、仕事の効率を高め、多くの人にサービスを手軽に利用する手段を与えることに成功した。一方で、増え続けるアプリケーションとサービスは複雑性を増し、利用開始までのハードルを引き上げる問題を引き起こしている。

 今日、多くの企業では目的や業務に応じた何十ものアプリケーションが存在しているが、これらのうち、どれほどのアプリケーションが有効に活用されているのかは疑問だ。また、労働人口の減少によって、高齢者の雇用や海外人材の活用が進むにつれ、より生産性を高めるテクノロジーの有効活用は課題となりつつある。

 こうした問題を解決する仕掛けとして注目されているのが「DAP(Digital Adaption Platform)」だ。

 DAPはWalkMeというイスラエル発祥の企業が提唱する概念。一種のヘルプデスクの仕組みをアプリケーション上に展開し、誰もが確実に操作できるように適切な形でデジタル的に案内を行う仕掛けになっている。

 こうした一種のオンラインマニュアルを加えたトレーニング的な要素に加え、企業における各アプリケーションの利用状況のモニタリングや、操作時につまづくポイントの摘出など、さらなるテクノロジーの活用と効率化を促す。従業員へのテクノロジー教育や支援をマンツーマン方式ではなく、ある程度自動化できる点にこの技術の特徴がある。

 このDAPのアイデアに基づいた製品を展開するWalkMeは、2011年設立の比較的若い会社だが、米国を起点に欧州やアジア太平洋地域へと市場を広げ、これまで受けた累計投資額は約3億1000万ドル、企業の評価額は1年半で2倍に上昇したという。

 そして19年2月にはジャパン・クラウド・コンピューティングとの提携でジョイントベンチャー(JV)形式で日本オフィス設立を発表し、その代表として元Salesforce.comの道下和良氏を招致している。

 日本でも顧客企業は増えつつあり、日立ソリューションズや住友商事などでの活用が進んでいる。そして2月27日にはDAPの解説とともに顧客事例紹介や交流を主眼とした「Digital Adoption Summit 2020」が東京都内で開催される。

 今回、DAPを取り巻く現状とWalkMeの活用について、同社VPのGilad Friedman氏に話を聞いた。

米WalkMeのGilad Friedman氏。WalkMeの在籍年数は4年ほどだが、それ以前よりIBMやDassault Systemesなどを通じて日本のビジネス事情に深く精通しており、非常に大きなチャンスがある市場だと述べている
WalkMeの現状まとめ

もともとのアイデアは老親の週末ヘルプデスクから始まった

 WalkMeでは、各アプリケーションで必要な操作をガイダンスとして表示し、もしユーザーが間違った操作を行った場合には警告したり、操作の助けになる情報を提供したりする。その最大の特徴は「Webアプリケーションからモバイル、従来型のデスクトップアプリケーションまで、ガイドを提供する環境を選ばない」という点にある。

 製品のもともとのアイデアは、創設者のうちの1人が、週末になると自身の母親からオンラインバンキングなどの使い方を聞かれる週末ヘルプデスクに駆り出され、もっと家族との時間を有効に使いたいと考えたことが発端だ。

 容易に想像できると思うが、オンラインバンキングや電話会社のオンラインサイトなど、サービス内容や操作方法を理解していないユーザーでは戸惑うポイントがいくつもある。独自のルールや情報入力を必要とされるWebサイトでは、適時サイトのヘルプを眺めたり、あるいは別のサイトにアクセスして必要な情報を入手してきたりと、とかく操作が煩雑になりがちだ。こうしたサービスを誰もが簡単に一発で利用できる仕組みがあれば……というわけだ。

 そうした形で、WalkMeのスタートは「外部のWebサービス」を“適切に”ガイドするための仕組みから始まった。これに評判を得ると、今度は導入企業から「社内のアプリケーションにも活用できないか?」という相談が持ち上がってくる。具体的にはイントラネットとも呼ばれる社内向けWebサービスで、社内外のWebアプリケーションをカバーすることになった。

 外部アプリケーションは顧客、つまりエンドユーザーを支援してサービスの利活用を促すのが主体だが、社内アプリケーションでは従業員の生産性向上に直結する。これがDAPで提唱する概念へとつながっている。17年1月にはモバイル環境向けのテストプラットフォームを提供する「Abbi」という企業を買収し、この仕組みをモバイルにも展開することが可能になった。そして最新のステップとして、今度はPCのデスクトップ向けに提供されるアプリケーションでの対応を進めている。

 「日本ではモバイル利用が多いことから、この部分が重要だと考えている。デスクトップについては、SAP ECCなど比較的レガシーなアプリケーションでの利用を想定している。金融関連など複雑な業務を要求される状況において、多くの顧客は新しい環境への移行を避けていまだに古いアプリケーションを使い続けていることから、SAPもまた、これらアプリケーションのサポートを続けている。WalkMeではこれらのニーズを全て満たし、企業の持つ全てのアプリケーション資産をカバーする」(Friedman氏)

WalkMeの5段階の進化

 これだけだと単なる操作ガイドとなるが、操作を体系化して各種分析が可能な仕組みを設けた点がWalkMeの特徴であり、同社ではこれをDAPと呼ぶ。次に行う操作や入力項目の指示が「ガイダンス(Guidance)」だとすれば、次のステップとして「エンゲージメント(Engagement)」が提供される。

 ガイダンスはあくまで指示を表示するだけだが、WalkMeはバックグラウンドでユーザーの動向を追いかけており、もし操作に戸惑ったり、あるいは間違った操作をしようとした場合、ポップアップなどで間違えを警告するように“予防的(Proactive)”に動作する。

 そして究極的に提供されるのが「オートメーション(Automation)」で、対話BOTなどを通じて得た最低限の確認事項を経て、必要な操作や項目の入力をWalkMeが自動的に行う。また、ユーザーの操作を経て得られた情報は管理者が「インサイト(Insights)」「ビジュアル解析(Visual Analytics)」「DAPコントロールセンター(DAP Control Centre)」を通じて多角的に見ることができるようになっており、問題の把握や、さらなる効率化に役立てることが可能だ。

 「WalkMeが提供する技術は非常にセキュアであり、ユーザー行動のパターン解析から正解パターンも導き出してガイドを行うなど、機械学習やAIを活用した機能を備えている。これが単純にバルーンを表示して操作ガイドを提供する類似製品との大きな違いだ。今日、多くの企業は操作マニュアルなどを整備してユーザー教育に当たろうとしているが、実際にどういった問題が起き、ユーザーが何を必要としているのかを把握するのはサポート依頼を受けたときだけだ。しかも実際に問題に直面したときにサポートを頼りにするのは全体のわずか7%程度であり、残りの93%は諦めてしまう。ユーザーがサポートを頼りにするときにはすでに手遅れであり、リアルタイムでの対応が重要となる」(同氏)

WalkMeが提唱するDAPを構成する要素
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