楽天側が実証実験などを通して送料無料化のメリットとして主張するのが、「流通総額アップ」「出店者の売り上げ増」「リピーター増」だが、肝心な出店者らの「利益増」はなかなか見えてこない。楽天が問題視する、送料を使って“利ざや”を稼いできた出店者は、無料化による送料負担増で利益が圧縮される。流通総額がアップすれば、手数料を徴収している楽天側はもうかる。ユーザーも、価格の透明性が上がることで満足度は向上するだろう。一方、出店者らはこれまで以上の「経営努力」が必要になってくる。
出店者らの利益増に関しては、楽天側も答えあぐねているのが現状だ。29日に開催した20年の新春カンファレンス後に開かれた会合でも、記者団から「出店者の利益が上がるデータはあるのか」という質問が出たが、楽天の担当者は回答に窮する場面が目立った。野原彰人執行役員も「われわれ、出店者さま、ユーザーの皆さま、3者のバランスをとるのは非常に難しい」と答えるにとどまった。
一方、三木谷社長は新春カンファレンスで「(送料無料化を)何が何でも成功させたい。政府と公取委と対抗しようとも、必ず遂行する」と強気の姿勢を崩さなかった。
出店者側の反発は強まっている。出店者らの任意団体「楽天ユニオン」は、送料無料化などの撤回を求め、1月22日に公正取引委員会に対して4000件ほど集まった署名を提出。「独占禁止法」に抵触するとしてやり玉に挙がった施策は、送料無料化だけでなく、出店者側が支払うアフィリエイト料や規約に違反した出店者に加算する「違反点数制度」など。送料無料化によって問題が表面化しただけで、出店者らは楽天側の施策に対して前々から不満をつのらせていた。
楽天ユニオンは、送料無料化はユーザーにとっても損だと主張する。公式Webサイト上で公開している「3980円送料無料ラインの撤回要求 署名フォーム」では、今回の施策は送料の無料化ではなく、送料が「商品価格に上乗せされ」「本来安い送料だった近県のお客さまに不当に高い送料をご負担」させる結果になる、と問題点を指摘。つまり、出店者らの利益を圧縮するだけでなく、ユーザーにとっても“不利益”となる制度だと主張している。楽天の掲げる「Win-Win-Win」どころか、楽天の「独り勝ち」となる構図だ。
「三方良し」を提唱しつつも、三木谷社長の念頭にあるのはAmazonだろう。新春カンファレンスでのスピーチによると、楽天市場の「NPS(=Net Promoter Score、顧客満足度を示す指数)」はAmazonに肉薄してきているという。競合するAmazonを追いかけるためにも、送料無料化は楽天にとって必要不可欠な施策のはず。しかし、それ以上に必要な「出店者の理解」を楽天はこれからどのように勝ち得ていくのだろうか。
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