コロナウィルスで打撃を被るのは「製薬会社」となり得る意外なワケ古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

» 2020年02月07日 07時50分 公開
[古田拓也ITmedia]
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製薬会社が最も恐れるのは“病のない世界”

 こうしたことから、コロナウィルスの蔓延(まんえん)で最も事業上の恩恵を得るのは、病気を治療する製薬会社ではなく、病気を予防する予防医療の会社になりそうだ。

 このような構造は、米国のゴールドラッシュの逸話とよく似ている。19世紀半ば、米国カリフォルニア州のサクラメントで金が取れることが話題となり、全米から金を採掘する人々が押し寄せたのが「ゴールドラッシュ」の始まりだ。

 当時のゴールドラッシュにおいて、大きな利益を上げたのは金の採掘者ではなく、デニムを作った者だった。多くの人々がゴールドラッシュと聞いて「金を採掘する」という発想にとらわれた。サクラメントの人口増に伴って、1人当たりの金の収穫量は当然減少するだろう。

 一方で、金の採掘者が増加することで作業着の需要は着実に増加していった。また、採掘はデニムの磨耗を早め、製品の回転率が大きく上がった。それにより、多くの採掘者が金を満足に得られなくなってきた末期であっても、デニムの作り手は膨大な利益を上げ続けられた。その作り手こそが、リーバイスの創業者、リーバイ・ストラウスである。

 この逸話を今回のケースに応用すれば、「病気が流行りであるから薬の株が上がる」と考える前に、「病気が流行ったときに、人々はどう行動するのかということと、最も必要とされるものは何か」を考えることが重要であるということだろう。

 このように考えた時、やはりコロナウィルスによって人々は例年にも増してマスクや手洗いうがいといった予防に励むだろう。そうすると、ある感染症の蔓延(まんえん)が、他の感染症にかかる人の総数を減らすことにつながり、製薬会社の業績が打撃を被ることもあり得る。ただし、製薬会社は感染症の薬だけを扱っているわけではないため、大幅な株価の下落をもたらすかといわれれば、それもまた誤りだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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