「としまえん閉園」は寂しいけれど…… 鉄道会社にとって“遊園地”とは何か杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2020年02月07日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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今は寂しいかもしれないが、時代に即した街が生まれる

 そう考えると、西武鉄道が「としまえん」をテーマパークに譲り、「西武園ゆうえんち」をリニューアルする意味も分かる。「としまえん」の土地は有効活用すべきだし、「西武園ゆうえんち」はいまだに鉄道需要を創出する場所にある。

 西武鉄道は、としまえん跡地の売却益で西武園ゆうえんちのリニューアルを進めるという算段だろう。しかし、東京都が営業中の商業施設を買い取るとなれば、補償金額を含めて地価以上の予算が必要だ。オリンピック、パラリンピックへの大規模投資を実施した東京都である。膨大な出費に議会や都民の理解が得られるか、疑問ではある。

 ともあれ、交渉がまとまれば、としまえん跡地が大規模公園になり、都民の憩いの場所として開放される。一部の土地には新しいテーマパークができる。そして西武園ゆうえんちはリニューアルされて魅力が増す。どれも悪い話ではない。

 心配なところがあるとすれば、西武鉄道沿線の人々に「としまえん」とのお別れをどう着地させるか。特に、メリーゴーラウンド「カルーセルエルドラド」は、1907年にドイツで作られ、米国の遊園地に設置された後にとしまえんに移設された。日本最古であり、世界でも貴重な代物だ。日本機械学会によって機械遺産にも認定されている。もっとも、それだけ古いからこそ厄介な装置になっているのかもしれない。

 としまえんとのお別れは寂しい。しかし、現在の二子玉川園、向ヶ丘遊園にもつらく寂しいお別れはあった。いまや遊園地があったことを知る人も減って、時代にふさわしい街ができている。遊園地を懐かしがる人はいても、なくて困る人はいない。それがレジャー産業の宿命である。

二子玉川園(当時)の空中写真(地理院地図より)
二子玉川園の跡地は高層ビル群「二子玉川ライズ」に(地理院地図より)

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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