「7畳の学生寮」に住む大学生が増えている、いくつかの理由水曜インタビュー劇場(狭い公演)(2/6 ページ)

» 2020年02月19日 08時03分 公開
[土肥義則ITmedia]

「学生寮」の市場

土肥: 東急不動産は18年に初めて学生寮を建てて、その後、どんどん増やしていますよね。「学生寮」と聞くと、なんだか時代遅れの感じもするのですが、なぜチカラを入れているのでしょうか?

玉置: 当社はこれまで分譲住宅や賃貸住宅のほかに、ホテルなども手掛けてきました。ただ、いずれも競争が激しいんですよね。こうした背景があるので、「新しい収益源を見つけなければいけない」「新規事業をやらなければいけない」という課題がありました。

土肥: で、学生寮に注目したわけですね。ただ、子どもの数は減っているのに、なぜこのタイミングで学生しか住むことができない物件に目をつけたのでしょうか?

玉置: ご指摘のとおり、人口減少を受けて、学生の数はどんどん減っています。ただ、文部科学省のデータを見ると、大学生の数はほぼ横ばいなんですよね。ここ10年を振り返ると、370万人前後で推移しているわけですが、なぜか。大学進学率が上昇していて、18年は53.3%。04年のデータと比べると、10ポイントほど上昇している。また、女子学生は9年連続で伸びている。

 とはいえ人口が減少しているので、今後は減少していくのでは? と思われたかもしれませんが、まだまだ増えると見込んでいるんですよね。政府は「グローバル戦略」を掲げていて、その一環として、20年をめどに留学生30万人を受け入れる見込み。こうした背景を考えると、近い将来はどうなるのか。大学生の数が爆発的に増えることは考えられませんが、急速に減少することも考えられません。

土肥: ふむふむ。

学生寮の廊下

玉置: ちょっと話は変わるのですが、いまの学生はどんなところに住んでいると思いますか? 大学生協の調査によると、実家以外のところで暮らしている学生は52%(約195万人)。内訳をみると、「アパート」が最も多く28%、次いで「マンション」(17%)。「学生寮」は3%なんですよね。

土肥: たった3%しかいない。数にすると、約11万人をめぐって、各社はしのぎを削っているわけですか?

玉置: 現状はそのような形になっていますが、今後はどうか。現状「アパート」に住んでいる学生が最も多いのですが、その数はどんどん減少しているんですよね。一方で、学生寮は減っていません。

 おさらいすると、学生数は横ばいが続いている。理由として、進学率が上昇している、女子学生が増えている、留学生も増えそうだ。また、アパートに住む学生が減っていることもあって、学生寮を選択する人が増えてくるのではないか。こうした市場背景があるので、学生をターゲットにした物件にチカラを入れることにしました。

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