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auカブコム証券・齋藤正勝社長「日本のネット証券は構造を変えるべき」――手数料競争から“資産形成サービス”競争へ(2/3 ページ)

» 2020年02月20日 05時15分 公開
[森永康平ITmedia]

業界が厳しいタイミングだからこそ「刺激」を与える

――日本の証券業界は国内の他の業種や、海外と比べても変化が少ない印象です。

 30年前は時価総額の世界上位10社のうち、7社は日本企業だったのですが、いまは1社も入っていない。ついに“化けの皮”が剥がれたんです。いまや、日本の金融機関にはJPモルガンのAML/CFT(マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策)のシステムが入っている。

 Amazonは最初、本だけ売っていました。でも、その後は全ての商品を売るようになった。そして、クラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)」というインフラの販売まで展開して、いまやAmazon Connect(アマゾンコネクト)といってコールセンターまで売っている。

 こういう展開は他の産業から見れば普通なんです。金融業界はある意味「異常」ですよ。各社が新システムを作るといって、何百億円、何千億円を使っていますが、それはベンダーだけが儲(もう)かる仕組みなんです。無駄な投資をすることによって、その分、消費者には還元できなくなるんです。金融機関の勘定システムなんて各社が持つ必要がありますか? フロントのUI/UXで勝負するのはいいと思いますが、バックのシステムは各社が共有すればいいんです。

 消費税対応だってそうです。でも実際には各社ごとに対応しました。IT企業は儲(もう)かるかもしれないけど、実際には無駄なことだと思いますよ。

――「バックオフィスを共有しましょう」という企画はネット証券業界ではこれまでに何度も話が出ていましたが、その度に頓挫していた印象です。斎藤社長の話を聞いていると、それが最も合理的に感じますが、なぜうまくいかないのでしょうか?

 各社が自分たちの都合で物を考えているからですよ。誰が儲かるとか、そういう話になる。当社の手数料無料化についても批判的な意見が出ましたが、証券会社が厳しいタイミングだからこそ「刺激」を与えないと分からないんです。アベノミクスによって相場が吹いているタイミングで仕掛けても理解してもらえません。

 当社は上場廃止をしたことによって、四半期ごとの決算にも上場企業ほどはとらわれずに、MUFGとKDDIという大きな資本の下で、リスクを取って、新しいチャレンジをしながら業界を変えていけます。

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