元大阪府知事・元大阪市長、橋下徹――。彼の名前を聞くと、「政治の世界で仕事をしてきた人間」という印象が強いかもしれない。だが、もともと橋下は有能な弁護士だった。橋下自身も、政治家として力を発揮してきた土台には「民間の世界で身につけてきた仕事の基本がある」と語っている。
弁護士であるにもかかわらずスーツを着ず、茶髪、Gパン、革ジャンといった個性的な出でたちでマスメディアに出演し、その後は政治家として巨大な役所組織を率いるリーダーとなった。政治家として時には周囲と激しく衝突し、「異端視」されながらも行政改革に奮闘したことは誰もが認めるところだろう。
行政改革とは、言い換えれば「組織改革」だ。大阪府庁、大阪市庁という組織を変革し、それまで停滞の一途をたどっていた大阪を、圧倒的な実行力で立て直してきた。「適正な組織づくり」という点においては、公的組織と民間組織の間で大きな違いはない。どちらも、組織の意欲や機能性を高め、その組織の使命を実行し、世の中の役に立てていく。つまり、「定めた目標・戦略を実行するために適正な組織をつくる」点では変わらない。
この連載では新著『異端のすすめ 強みを武器にする生き方』(SB新書)の中から巨大組織を率いたリーダー、橋下徹の仕事や働き方についての考え方をお届けしていく。第6回目は、橋下が実行してきた「圧倒的な結果を生み出す突破力」について聞いた。
もし、今までやってきたこと、今やっていることがうまくいかないなら、要するに、その方法でいつまでやってもうまくいかないということです。同じ方向性の中でいろいろと改善・調整してみても、大きな結果を出すことはまずないでしょう。
うだつの上がらない現状を突破するには、今までやってきた方向性を180度逆転させる行動力が必要です。僕は2008年に大阪府知事になりましたが、当時の大阪の状況は惨憺たるものでした。
僕には、その状況を変えるための完全なる正解が何かなんて分かりません。学者やインテリたちが言うことも、ほとんどあてになりません。ただ現状を見れば、今までやってきたことが奏功していないことは明らかでした。だから僕は、「とにかく今までやってきたことの逆を行ってみよう」と考えました。方向性の大転換です。
ここで重要なことは、これまでやってきた方向性を的確に認識することです。この認識にズレがあれば、180度方向転換をしても結局ズレたものになってしまいます。08年、僕が知事に就任してまずやったのも、大阪府政の方針である「総合計画」なるものを読み込むことでした。これまでのものを合計すると膨大な量になります。その分析の結果、これまでの大阪府政の方向性は、「定住人口を増やす」ということが大きな柱になっていることが分かりました。この柱を基に、さまざまな政策が展開されていたのです。
でも日本の歴史を振り返って人口推移を見れば、今後「人口を増やす」というのは、もはや絵空事です。日本の人口は縮小傾向にあるのが現実です。だから人口を増やすのは無理なのです。では、人口減少による経済縮小にはどう対応するのか。ここで方向性の180度転換です。大阪内の定住人口を増やす方向性から大阪の外から人を集めてくる。人がとにかく集まれば、その流れでモノとカネも集まり、人・モノ・カネが大阪内をグルグル回ることで、経済の熱が発します。
したがって、日本中から人・モノ・カネを大阪に集めて世界に送り出し、世界から人・モノ・カネを大阪に集めて日本各地に送り出す。そんな世界と日本の「中継都市」であることを、これからの大阪の方向性にしていこうとしたのでした。
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