「新型コロナには一致団結で!」と叫ぶ組織が、残念な結果を招く理由スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2020年02月25日 08時28分 公開
[窪田順生ITmedia]

「隠ぺい」や「改ざん」が後を絶たない構造

 危機管理に失敗する組織の内部でどのような議論、どのようなムードがあるのかを観察していくと、「一致団結」「チームワーク」「全社員で一丸となった」なんてパワーワードが飛び交っていることが多く、それが皮肉なことに、組織内の風通しを悪くして、危機管理を失敗させているのだ。

 例えば、ある企業で社会の信頼を損ねるような不祥事が発覚したとしよう。当然、営業マンなど現場の社員たちは、顧客や取引先への説明などに追われる。一方、社内ではなぜこんな不祥事が起きてしまったのか調査を開始。すると、これとはまた別の不正行為が発覚してしまう。

 筆者としては、これもどうせ遅かれ早かれ社会にバレるのだから速やかに公表すべきだとアドバイスをする。社内にも膿(うみ)をすべて出し切るためにも公表すべきという人たちがいる。

 しかし、これを受け入れる経営者や幹部は少ない。10社あれば2社くらいで、ほとんどの組織は「公表しない」という決断をする。と言っても、社会の目を欺(あざむ)きたいとか、責任逃れをしたいとかではない。「一致団結」のためである。

 ただでさえ、現場の人間は疲弊してボロボロだ。そこへまた新たな問題がありました、などと公表をしたら、もはや現場の人間は潰れてしまう。そうなったら、この危機を乗り越えることはできない。確かに、情報公開の姿勢は大事だが、会社として今やるべきことは問題の速やかな解決である。そのためには、新しい不正行為の公表はいったんストップをかけるべきではないのか――。そんなロジックでクサイものにフタをしてしまうのだ。

 そのあたりの考え方は、以下のような三段論法にすると分かりやすいだろう。

(1)問題解決のためには、一致団結をしなくてはいけない

(2)一致団結のためには、現場の士気を乱すような情報を公表してはいけない

(3)問題解決のためには、都合の悪い新しい情報は隠すべきだ

 つまり、彼らの理屈では「隠ぺい」ではなく、「問題解決のため組織内を一致団結させるために公表を控えた」ということなのだ。

 もちろん、筆者は報道対策が仕事なので、「それは組織論理で社会からはまったく共感されず、ボコボコに叩かれますよ」と忠告する。会社の対応に納得のいかない社員は、「おかしい」と声をあげる。だが、このような「異論」はほぼ間違いなく通らない。

 筆者のような外部の人間は「いたずらに不安をあおる人間」として、岩田氏のように組織外へと追い出される。社員の場合も、「一致団結しなければいけないときに、社内秩序を乱す不届き者」として冷遇や排除される。企業の不正などを内部告発した人間が、いきなり飛ばされたりクビに追いやられるのはこれが理由だ。

 ただ、先ほども申し上げたように、こういう問題は遅かれ早かれバレる。そして、結果として「隠ぺい」などと叩かれるものなのだ。これが日本の名だたる大企業や巨大組織、ひいては政府や官庁が「隠ぺい」や「改ざん」が後を絶たない構造である。

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