「新型コロナには一致団結で!」と叫ぶ組織が、残念な結果を招く理由スピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2020年02月25日 08時28分 公開
[窪田順生ITmedia]
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日本の“負けパターン”

 当時の日本は「危機」を前にすると決まり文句のように、「愛国」と「一致団結」を叫んだ。だから、そこに異論を唱えた者は「非国民」のそしりを受けて、ひどい場合は投獄されて拷問もされた。

 「超非常時の克服 陸相の適切な訓示 焔の如き尊王愛国の熱情 鉄石の如き官民の一致団結」(読売新聞 1941年1月5日)

 「一致団結 国威を発揚 帰還勇士もまじる 海外同胞訓練所の開所式」(同上 1942年6月2日)

 この結果、日本人がどういう結末をたどったのかを述べる必要はないだろう。

 五輪というこれまた国威発揚イベントが控えているからか、最近やたらと「日本には日本のやり方がある!」「こういう苦しいときこそ、日本人がひとつにまとまるべき」みたいな主張が増えているような気がする。

 歴史に学べば、これはいつもの日本の“負けパターン”である。「みんな」「絆」「一致団結」という言葉を出されると冷静に物事を考えられなくなって社会が暴走を始めるのだ。

 そのような意味では、今回の防疫戦の惨敗はいい教訓だ。国際社会からの批判に真摯(しんし)に耳を傾けて、「全体主義の罠」から抜け出すべきではないのか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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