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横行する「ブラッククビ」、急増する「非正規コスト」 4月に勃発する“雇用大変革”に対応できない企業は淘汰される守れない経営者は「前科」に(3/5 ページ)

» 2020年03月03日 05時15分 公開
[成相裕幸ITmedia]
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中小企業で横行する「ブラッククビ」

――同一労働同一賃金の実現にはさまざまな障壁がありそうですね。

 そもそも現在言われている同一労働同一賃金はあくまで「日本型」であることを考慮しないといけません。欧州では職種別・産業別労組で労賃を協議している。転職しても同じ産業や同じ仕事なら給料は一緒なのです。日本では同じ仕事をしても法人や責任が異なれば給与も当然異なるし、人材活用の仕方も違う。

 加えてドイツ・フランス・イタリアなどの欧州では、解雇について労使間での金銭解決も根付いています。日本では正社員は会社に保護されているといっても大企業だけですね。中小企業には労働法から見ると違法な解雇も横行しています。私はこれをブラック企業にかけて「ブラッククビ」と言っています。

 労働基準監督署で個別の労働紛争のあっせん制度がありますが、その事例を見るととても裁判では認められないような解雇事案を5万〜10万円で解決している例もありました。労働審判にすればその10倍は解決金として支払われるケースもあり得るにもかかわらずです。

 労働者側に知識がないこともありますが、原因はそれだけでしょうか。労働審判の解決までに現行法では早くても3カ月から半年はかかってしまう。その判断を待つよりは、解雇時点でお金をもらえるほうが、手っ取り早いと考えてしまうこともあるでしょう。解雇の金銭解決は大企業では労働組合が反対して、中小企業では経営者が反対する、という構図です。

 同一労働同一賃金は、すでに通勤手当や業務手当などの手当について最高裁判所の判例が出ています。しかし基本給、給与、退職金についてはまだ出ていませんし、高等裁判所の司法判断もばらばらなので、今後の動向が気になるところです。

phot 「不合理な待遇差」を解消するための規定が整備された(厚生労働省リーフレット「働き方改革〜一億総活躍社会の実現に向けて」より)

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