フィンテックで変わる財務

スマホ決済の勝者はこのまま「QRコード決済」になるのか? 一筋縄ではいかないこれだけの理由2020年がターニングポイントに?(3/4 ページ)

» 2020年02月28日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

日本と中国の決定的な違い

 結局のところ、生き残れるQRコード決済陣営は「資金力のある大手のみ」という印象が強く、ソフトバンク・グループという大きな資本背景を持つヤフーと、これと並ぶ国内最大のECショッピングモールを運営する楽天の2社に絞られるのではないかというのが、常識的な見方でしょう。

 また今後のキャッシュレス・ビジネスの展開はスマホ抜きでは考えにくく、この上位2社の共通点としてスマホを自由に操れる携帯通信キャリア事業をグループ内に持っているということも、大きな強みであると言えます(楽天モバイルは4月スタート予定ですが)。現状で比較劣後にあるメルカリがポイントの共通化でNTTドコモと提携したのも、携帯通信キャリアとの連携で上位2社に離されまいとする苦肉の策といえます。

 以上のような状況が、わが国のキャッシュレス化の流れをけん引しているQRコード決済を巡る最新動向です。しかしここで1つ気になるのは、果たしてこのQRコード決済がこのままキャッシュレス化の流れを「主役」として引っ張り続けていけるのか、ということです。

 QRコード決済がわが国で近年注目を集めた背景には、近隣アジアのキャッシュレス先進国である中国でこの方式が主役を務めてきたという影響が強いからなのですが、中国では日本とは大きく異なる事情が潜んでいました。それは第一に中国の「偽造紙幣問題」が深刻であり、この対策として短時間で導入が進むQRコード決済に利があったということ。もう1つは、星の数ほどある中国小売店の大半で読み取り機器の導入コストや決済手数料負担が難しく、大資本のアリババやテンセントがこの点に着目してコストレスなQRコード決済を推進したことで、これが急速に浸透していったという事情です。

中国のQRコード決済ブームは「偽造紙幣」も一因(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 日本の場合には偽造紙幣問題はゼロに等しい状況であり、まずこの点が中国と全く異なっています。今後QRコード決済が広がるにつれて、日本の国民性からはむしろ小売店の手数料負担の問題以上に、セキュリティ上の視点がクローズアップされてくる可能性が大きいと思われます。店の導入コスト負担が小さいQRコード決済は、店側のQRコードを読み込んで支払う方式です。これは専用端末なしで導入が可能なのですが、裏を返せばQRコードが偽造された場合に本来の支払い先とは異なる先への支払いに容易に誘導されてしまうなどのリスクが存在します。このリスク回避には専用端末を用いるのがベストですが、それではコストレス導入の利便性が失われてしまい、そうなると専用端末方式で利用者側の利便性がより高いといわれる「非接触型決済」に、優位性で負けてしまうのです。

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