7年ぶりに新作の半沢直樹 1月放送の「エピソードゼロ」からメガバンクの生存戦略を読み解くマイナス金利、脱日本的金融……(2/4 ページ)

» 2020年03月09日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

金融庁が求める「脱日本的金融」とは

 今金融庁が銀行に求めている「脱日本的金融」ともいえそうな指導方針は、銀行は「継続性と成長性共にすぐれた企業」ばかりに収益性の低い融資を売り込むのではなく、これまで銀行が積極的に融資対象としてこなかった「成長性はあるけれど継続性に乏しい企業」や「継続性はあるけれど成長性に乏しい企業」にもっとおカネを貸しなさい、というのがその核心部です。

 「成長性はあるけれど継続性に乏しい企業」こそ、「下町ロケット」における高い技術力を誇る大手下請け企業「佃製作所」であり、「継続性はあるけれど成長性に乏しい企業」は「陸王」における足袋づくりの老舗「こはぜ屋」であるわけで、実は池井戸作品は「裏」物語でもビジネス界を舞台に、銀行界の「暗部」を扱ってきているのです。

「陸王」や「下町ロケット」は銀行業界の「裏」を描いた(出所:Amazon公式Webサイト)

7年間で銀行界はどう変わった?

 さて今回の「半沢直樹」ですが、先に述べた通り7年前と今では金融界、とりわけ銀行界の様相は一変しています。その最大の理由は、16年に始まったマイナス金利政策です。民間の金融機関が日銀に預ける預金金利をマイナスにするもので、言い換えれば日銀に預金すると、預けた金融機関が本来「もらえる」はずの金利を「支払う」ことになるのです。

 銀行は、個人や法人からお金を預かれば、いくら「低金利」とはいえお客に預金金利を支払います。このマイナス金利になってしまうと、余剰資金を日銀に預けるわけにもいかず、積極的に融資を伸ばさないと収支はマイナスになってしまう。

 しかし、例え金融庁から脱「日本的金融」を指導されようとも一朝一夕にうまくいくものでもありません。従って、勢い銀行は運用難に陥って収益の足を引っ張られ、特に地方銀行を中心として赤字決算が続出しているわけなのです。

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