10年で市場4倍! 飲兵衛こそ「ノンアル」に、注目すべき理由スピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2020年03月10日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

世界的な潮流

 世界平均の飲酒率を上回る「酒好き国」として知られるベトナムは2019年6月に、アルコール被害防止法案を可決。ラジオやテレビでの酒の広告も午後6時〜9時は禁止。「ベトナム政府が規制を強化するのは確実で、広告の制限は序章にすぎない」(日経産業新聞 19年7月5日)ということで、夜間、深夜の販売禁止や、カラオケ店の販売禁止も検討されている。

 経済発展が著しく、世界のビールメーカーも熱い視線を送るベトナムがなぜこんな経済活動に冷や水を浴びせるような規制に走っているのかというと、医療費がドカンとはね上がっているので酒の飲み過ぎで体を壊す国民を少しでも減らしたいことと、飲酒運転による事故が増えてきているからだ。酒を飲み過ぎることによる弊害のほうが経済効果よりも大きくなってきたのだ。

日本のノンアル市場が拡大している(出典:サントリーホールディングス)

 このような世界的なトレンドに、日本も遅かれ早かれ飲み込まれる。つまり、そう遠くない未来の日本では、もったいないからとベロベロになるまで注文を繰り返す飲み放題居酒屋や、「やっぱ外で飲む酒はうまいな」なんて調子でビニールシートを敷いて宴会を催すお花見などが「規制」の対象になる可能性があるのだ。

 という話をすると、決まって「居酒屋も花見も外国人が絶賛する日本の文化だ! なんでもかんでも海外ガーとかいうのは西洋コンプレックスだ!」とキレる方たちが出てくるのだが、そういうことを叫んでも良い結果を招いてこなかった現実もある。

 歴史を振り返れば、日本はさまざまな分野で「オレ流」を貫いて、世界の潮流と異なる独自路線を進むものの、ことごとく敗北しているのだ。分かりやすいのが、ガラケー、軽自動車、自動販売機などだが、規制分野でボロ負けしたのが、「タバコ規制」である。

 今でこそ、ファミレスやファストフードは全席禁煙、オフィスや役所でも喫煙所が屋外につくられるのが当たり前になっているが、実はこれは「屋内原則禁煙」という世界の潮流に迎合したもの。それまで日本は「オレたちにはオレたちのやり方があるんだ」と言わんばかりの独自路線を歩んでいた。

 そう、「分煙」である。

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