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日本の管理職が「どれほど激務でも絶対に報われない」残酷なメカニズムとは当事者調査データで判明(3/3 ページ)

» 2020年03月10日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
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 パーソル総研のデータではないが、東京大学が19年に発表した日韓と欧州各国の職業階層別の死亡率の比較研究でも、管理職の抱える問題が明らかになっている。日韓では特に、「管理職・専門職」の人の死亡率が他の職業階層より高くなった。肉体労働者の死亡率が高めの傾向にある欧州とは逆の結果だ。

 仕事の負担に心身ともに蝕(むしば)まれ、しかも「報われない」日本の管理職。「彼らは“休めない”“学べない”“(部下を)育てられない”“(付加価値を)生み出せない”の、無い尽くし状態だ」(小林さん)。

「新しい働き方」でマネジメント業務急増

 では、管理職が日常業務の中でも負担やストレスを特に感じているのは、具体的にどんな業務内容なのか。彼らの「役割別負担感」について項目別に挙げてもらったところ、1位は「組織内のトラブルや障害の解決」。ただ、2位以下で上位となったのは主に「面談でのフィードバック」「モチベーションを維持・向上させるコミュニケーション」といった、部下へのマネジメントの役割だった。

photo 管理職の「役割別負担感」ランキング(パーソル総研「中間管理職の就業負担に関する定量調査」)

 ここには、前述の働き方改革、加えてハラスメント問題の対応や職場のダイバーシティー(多様性尊重)の向上といった、近年急激に重視されるようになったテーマも大きく影響しているという。「今の職場はシニアや外国人の従業員など人材の多様性が増している。加えてパワハラ防止、部下のメンタル問題などへの対策も浮上しており、(日本企業では)全て管理職がケアすることになる」(小林さん)。こうした一連の「新しい働き方」が、部下へのきめ細かで時間の掛かるフォローの手間を増やし、管理職の負担増大を加速している、というのだ。

 管理職と、彼らを支援すべき人事サイドとの認識の乖離(かいり)も調査から浮かび上がってきた。「職場で課題と感じているテーマ」について聞くと、管理職は「人手不足」や「後任者の不在」といった項目の優先順位が高くなる。一方で、人事サイドはやはり「働き方改革」「コンプラ対応」といった“既に浮上している問題”の解決を望む傾向にある、という結果になった。

 「人事は(人手不足などの)構造的問題を解決せず、ただ単に管理職にかぶせてしまう傾向にある。これから管理職へのリソースをたくさん増やそうという日本企業は恐らく出てこない。グローバル競争(のような市場環境激化)も、働き方改革も加速する一方だろう。これは出口の見えない問題になってしまっている」(小林さん)。

 一方で小林さんは、「部下マネジメントについて、中間管理職は“自分で自分の首を絞めてしまっている”部分も大きい」とも指摘する。付け焼刃で対処できそうもない、日本の管理職の構造問題。後編ではその解決法について探る。

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