── クルーズの安全を訴求する活動は業界団体が手掛けるのでしょうか。
木島 業界団体として「日本外航客船協会」がありますが、正会員は日本船社が主体で海外船社は賛助会員としての参加にとどまっています。そういう意味で、日本船社と海外船社が対等な関係でつながる横断的な業界団体が存在しないというのが現状です。
CLIA(Cruise Lines International Association)のような客船会社、旅行会社等関連機関が会員となってクルージングの推進と拡大を目標とする団体が今後は日本でも必要になるのではと考えています(取材者注:もう1つ「日本旅客船協会」があるが、こちらは内航客船が主体となっている)。
クルーズを扱う官庁の部署としては、国土交通省の海事局と港湾局、そして観光庁があります。ただ、港湾局は港の整備が主な業務で海事局は統計と法整備が主な業務です。JATA(日本旅行業協会)にもクルーズ部会がありますが、それほど積極的な活動はみられません。観光立国の提案のなかで、クルーズ客人数を20年に250万人と目標を掲げた観光庁がクルーズ振興を手掛けていますので連携した施策をお願いしたいです。
このように横断的な組織がないため、いまクルーズを中心に販売している旅行会社の有志の方々と何をしたらいいかを考える場を設けようとしています。ダイヤモンド・プリンセスも、状況が整ってクルーズを再開できる時期が来たら、まずはメディア関係者に乗船してもらい、安全対策が万全であること、そして、やはり船旅は楽しいことを日本の多くの人々に向けて発信することが必要です。
── ダイヤモンド・プリンセスでは、提供する食事やクルーの対応などを評価する船客も数多くいました。木島さんはダイヤモンド・プリンセスの日本発着クルーズが始まったとき、カーニバル・ジャパンのトップでしたが、日本向けのカスタマイズはかなり注意されていたのでしょうか。
木島 日本人に向けたサービスというのは他の国のサービスとは比べられないほど繊細で奥行きの深いものを要求されます。ダイヤモンド・プリンセスを日本に呼んだときに、彼らは日本のクルーズ市場に対して、どのようにすれば日本人は喜んでくれるのかを徹底的に研究していました。
日本の客船で提供しているサービスを研究し、日本語でのあいさつの仕方や説明の仕方、船客に配る文章の日本語などは全部私が中心となって日本側で細かくチェックしました。和食のメニュー、盛り付け、箸の置き方や和食に使う食器の柄なども1つ1つ確認しました。
そういう意味では、外国船籍の客船ではあっても中身は実質的に日本客船を作り上げるようなものです。そして、私たちのそのような考えを当時のカーニバル米国本社も信頼して、日本に全て任せてくれました。船客対応の乗員はフィリピン人が多いですが、日本の客船で働いていた人をかなり採用しました。
加えて、外国客船で船内施設として大浴場を備えているのはダイヤモンド・プリンセスだけです。このようにこの船はプリンセス・クルーズ所属の客船ですが、日本の造船所で建造されており、日本人にとってもプリンセス・クルーズにとっても特別な存在です。
ダイヤモンド・プリンセスは、ここまで7年間かけて日本発着クルーズを育ててきただけでなく、日本におけるクルーズの認知度をここまで高めてきたわけですから、この状況に負けることなく、これからもクルーズを継続して運航していくことは一番重要だと思うのです。日本のクルーズ市場にそった、日本の商習慣も考慮して進めて頂ければと思います。
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