フィンテックで変わる財務

日本法人も始動 デジタル証券発行の先駆者、セキュリタイズとは何か(3/3 ページ)

» 2020年04月03日 10時25分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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STOの可能性と課題

 Securitizeがこれまで取り扱ったSTOでは、不動産のデジタル証券化のほか、投資ファンド、ブロックチェーン企業の資金調達などがある。変わったものでは、米プロバスケットボールNBAの選手が、自身の契約金をベースにしたデジタル証券を発行した例もある。3年間の債券で、毎月金利が支払われ、満期を迎えれば元本が支払われる。ファンがプレイヤーに投資できるデジタル証券という位置付けだ。

 従来の事例では、金額は大きくても15〜20億円くらいで、債券のパターンが多いが、ABS(アセットバックセキュリティ、資産担保証券)の例もある。「調整しなくてはいけない関係者が比較的少ないので、不動産の証券化は向いている。STOは資金調達のハードルを下げるためのサービスなので、金額の大小よりも案件の内容が重要だ」(森田氏)

パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンのSTO普及に関してのSecuritizeのロードマップ

 パブリックブロックチェーンを使ったSTOが有名なSecuritizeだが、ブロックチェーン自体は選べるプラットフォームになっている。パブリックではイーサリアム上のERC20準拠のDSトークンを使い、プライベートブロックチェーンではプライベートイーサリアムやオープンソースのHyperledgerも利用できる。同社のロードマップによると、早期に立ち上がるのはプライベートブロックチェーンを使った、機関投資家を中心としたマーケットだ。その後、オルタナティブ投資の一つとしてクリプト投資家や富裕層を中心に、パブリックブロックチェーンでのSTOが増加すると見ている。

 将来に向けては、さまざまな用途での資金調達の可能性があるが、国内においては当初、規制の観点から証券会社とパートナーを組んでSTOを実施していく方向だ。STOには金融商品取引業のライセンスが必要となるためだ。この点で、従来のICOがしっかり整備されたというよりも、既存の証券発行が、技術によって効率化されるという意味合いが強い。

 「既存のプレーヤーと、まずは業務の効率化から始まるが、安全性などが認知されれば広がっていく。時間はかかるかもしれないが、新しい市場が作れるのではないか」(森田氏)

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