NetflixがCLAMPらトップクリエイターと組む真の狙い――「製作委員会を超越する」アニメ作りの革命ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(2/4 ページ)

» 2020年04月07日 08時00分 公開
[数土直志ITmedia]

製作委員会飛び越えスタジオと直にタッグ

 転機となったのは、2018年1月配信の『DEVILMAN crybaby』だ。国内外で注目されるアニメ監督の湯浅政明を起用し、永井豪の傑作マンガを新たにアニメ化した。ここで初めてNetflix独占配信タイトル、かつテレビ放送を全くしていない作品が登場した。「Netflixオリジナルアニメ」ブランドの誕生である。ただこの段階でも、オリジナルアニメの多くは既に存在する企画を独占配信のかたちでピックアップしたものだった。

photo 日本発のオリジナルアニメを強化してきたNetflix(筆者撮影)

 18年、19年に相次いだ日本の有力アニメ制作会社5社との包括的業務提携契約が次の転機になる。『攻殻機動隊』シリーズのプロダクション I.Gや、『鋼の錬金術師』のボンズ、さらに新興のデイヴィッドプロダクション、アニマ、サブリメイションといったスタジオと長期間にわたり安定的な番組制作を目指すことになる。

 こうしてNetflixは製作委員会や放送局を飛び越えて、制作スタジオと直接ビジネスすることになる。Netflixのアニメ制作への関与は格段に大きくなった。

photo Netflixは政策委員会の枠を飛び越え、日本の有力アニメ制作会社5社と直に提携(筆者撮影)

 さらに今回のクリエイターとのパートナーシップである。制作会社さえ飛び越えて、作品のアイデアの源泉であるマンガ家や小説家と手を組む。日本アニメのアイデアの多くが、マンガや小説にあることを見抜いたものである。

 これまでNetflixは番組の配信権購入は手掛けても、製作出資はしないとされてきた。その点、アニメの企画・クリエイティブには踏み込まないとの意思を制作者に感じさせてきた。

 しかし「出資」となれば、Netflixは企画や制作、クリエイティブも含めて日本アニメを共に作ることになり、その役割は根本的に変わることになるのだ。映画会社の東宝が製作と配給を、ビデオメーカーのバンダイナムコアーツが製作とDVD・Blu−rayの販売を両方とも手掛けるイメージに近い。

 となれば、Netflixの企画・製作で果たす役割はさらに大きくなる。いわば配信という流通会社から、自らがコンテンツを創出するクリイティブカンパニーに立場を変えるのだ。企画本数の多さからも、日本のアニメのクリエイティブの中核の1つとなるだろう。日本のアニメ企業各社のNetflixを見る目も大きく変わる。

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