NetflixがCLAMPらトップクリエイターと組む真の狙い――「製作委員会を超越する」アニメ作りの革命ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(3/4 ページ)

» 2020年04月07日 08時00分 公開
[数土直志ITmedia]

日本のクリエイター、Netflix通じ世界へ

 これについてNetflix自身は、どう捉えているのだろう。同社のアニメ チーフプロデューサーの櫻井大樹氏は、2月25日の発表で「(Netflixの)クリエイターとのパートナーシップは、日本のクリエイティブ強化につながる」と話した。日本のクリエイティブが世界規模で認められる可能性が広がるからだ。

 一方、それでも外資系企業であることも含めて、対外的な印象に気を遣う様子も窺(うかが)えた。

 「Netflixにあるアニメーション3部門の1つである『アニメ(ANIME)』の拠点は東京にあり、全てはそこで決定までできる」と強調するのは、日本からのクリエイティブ発信の重視を伝えたいと気持ちの表れだろう。

 人によっては、日本の有力クリエイターがNetflixに囲い込まれたとも見る向きもあるかもしれない。ただクリエイター側からすれば、Netflixの仕組みを使うことで新しいことに挑戦できるのが魅力だ。

 記者発表会でCLAMPのメンバーの1人である大川七瀬、それにマンガ原作者の樹林伸は、共に今回の取り組みに参加する理由として「世界百数十か国、1億数千万世帯という配信ネットワークの大きさ」を挙げた。Netflixとクリエイターたちはwin-winの関係にある。

 6組のクリエイターは人気があるだけでなく、常に新しい分野に挑んできた点でも共通する。彼らにはNetflixは大きなチャンスと映る。実際に櫻井氏によれば、今回パートナーシップの声をかけたクリエイター6組からは、それぞれ契約の違いはあるものの全てOKとの快諾だったという。

 では、従来のやり方でアニメ企画・製作に携わってきた側にとってはどうだろうか。アニメ企画では実際にアニメーションを制作するスタジオ、制作会社が大きな役割を果たすことも多い。企画・テーマを決めて、スタッフをアレンジし、それをプレゼンテーションして出資を募る。企画段階でNetflixがクリエイターと手を組めば、製作会社だけでなく、アニメスタジオもその場所から抜かれてしまったように見える。

 櫻井氏は今回のスキームではまずクリエイターと共に企画を練り、それに関心を持ってもらえれば、制作会社に企画段階で参加してもらうことも、アニメーション制作だけ担当してもらうことも可能だと話す。制作会社を排除するものでなく、Netflixとクリエイター、制作会社という3者の関係がフレキシブルである点を強調する。

それでも制作会社が初期段階の作品アイデアの核であるクリエイティブ に関われなくなるとの懸念は拭いきれない。これは今後発表されていく作品をみて判断することになりそうだ。

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