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» 2020年04月07日 08時00分 公開

世界一規律正しい日本人が、「外出自粛」の呼びかけを無視するワケスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

[窪田順生,ITmedia]

社会の混乱や不安を「ショー」として

 このメディアの構造的な欠陥はこれまでも度々指摘されてきて、「気をつけないと、社会に害を撒き散らすぞ」と警告されてきた。その代表が、「自殺」だ。

 ご存じの方も多いだろうが、カリスマ的な人気を誇る著名人の自殺をマスコミが一斉に報道をしたり、自殺の方法や場所などを詳細かつセンセーショナルに報じたりすると、自殺者の数が跳ね上がることが分かっている。

 「自殺」に関する情報がメディアに溢れることで、「あんなスターも悩んで自殺をするのなら、自分のような普通の人間も自殺するのはしょうがない」「世の中には自殺をする人がたくさんいるんだな」という誤解を与え、「自殺」に対する心のハードルを下げて、背中を押すようなことになっている。そのため、WHOでは自殺に関する報道ガイドラインを設けており、近年になって日本のメディアもこれを順守するようになったのだ。

 話が長くなるので割愛するが、もともとテレビのルーツは、「兵器」だ。映像の力によって、遠く離れた人々は思うままに動かすことができる、ということでナチスドイツが開発に着手して、それをアメリカが引き継いだ。

 そういう出自なので緊急事態下で使い方を間違えると、群衆を誤った方向に暴走させる。例えば、2014年5月、ウクライナ南部にあるオデッサという地域で、ウクライナ民族主義者とロシア系住民が衝突し、建物内で火災が発生。ロシア系住民40人が亡くなる大惨事となった。その後、ロシアではその報復として、多くの若者が自ら志願して戦場へ行った。ロシア側のテレビ報道で、「ウクライナ民族主義者が死体を辱めている」「妊婦が殺された」という証言が繰り返し報道されたからだ。

 しかし、結論からいうと、これはデマだった。要するに、ロシア国民の戦意を高揚するため、ウクライナへの憎悪をあおるためのプロパガンダだったのだ。

 今回、新型ウイルスとの戦争でも、テレビなどのマスコミは大きな役割を果たすはずだが、今のところ、トイレットペーパーパニックをあおったりと国民の足を引っ張ってばかりいる。震災報道で、無事な人々や被害のなかった地域はスルーして、壊れた家屋や津波の映像ばかりをセンセーショナルに報じて大ヒンシュクを買っているように、日本のマスコミは社会の混乱や不安を「ショー」として消費する傾向があるためだ。

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