遊びに行く人は外出を自粛すべき人である。従って、現在列車を利用する人、してもいい人は誰か。それは、どうしても通勤しなくてはいけない人だ。これらの人々は経済的、社会的に必要な人だ。その最も大事な人を感染リスクにさらしてはいけない。列車の減便と乗客数の調整に失敗すれば、さらに混雑度が高まる。だから減便よりは運休が望ましい。
電車を止める理由は3点ある。一つは前述の通り「感染拡大の防止」だ。次に、鉄道好きとしては「鉄道の名誉」を守りたい。鉄道を感染拡大の悪者にしたくない。これは鉄道ファンだけではなく、鉄道会社の従業員など、鉄道に関わる仕事をする人も同じ気持ちだろう。
そしてもう一つは、この状況下で鉄道運行を強制すると、鉄道事業者の経営危機を招きかねないからだ。
大都市圏の鉄道事業にとって、稼ぎ頭は通勤輸送だ。狭い空間に客を詰め込んでピストン輸送する。定期運賃割引があったとしても、最も輸送量の多い通勤客こそ巨大な収入源である。しかし、収入は多くてももうからない。通勤客をさばくための設備投資は膨大だ。駅のプラットホームを延ばし、車両を増やし、運行頻度を高めるために複線化、複々線化へ投資してきた。最近ではホームドアなど安全装置へのコストもかさんでいる。
それでいて、投資した分を早く回収しようとしても、都合よく運賃の値上げはできない。鉄道の運賃は上限認可制といって、国から「適切な利益」になるようにアタマを抑えられている。つまり、大都市圏の鉄道は、かなり大きな金が動きながらも「高コスト低収益」である。ここで通勤客が激減したら、電力、線路保守、人件費などのランニングコストはそのままで、収入が一方的に減る。いま、鉄道事業者は経営的に不均衡状態だ。いますぐにでも列車を止めて、ランニングコストをゼロに近づけたい。
鉄道は止めたほうがいい。動かしていい列車は、生産地から食糧を運ぶ貨物列車だけだ。まるで戦時下のような話だけど、まさにいま、戦時と同じ状況と考えていい。
2011年9月「国土交通政策研究第100号 通勤時の新型インフルエンザ対策に関する調査研究(首都圏)」。最初の発病者発生からの有病率の推移。青は対策なし。赤は通常運行のまま、14日目から乗車率20%。緑は通常運行のまま、7日目から乗車率20%。紫は通常運行のまま、7日目から乗車率30%。水色は7日目から運行本数を半減、乗車率20%(出典:国土交通省)
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